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愛の檻シリーズ

続・愛の檻

 ←愛の檻 →愛の檻・完
タイトルの通り、短編『愛の檻』の続きです。



青年は湯を使った後、長椅子に腰を下ろして髪を拭いていた。
拭き終えてからも、彼は布を頭からかぶっていた。少女に顔色を読まれたくなかったのだ。
「疲れてるだろう。君は早く休むといい」
「黎翔は・・・?」
「私はここにいる。君の護衛だから。どうせ深く眠ることはないのだし」
少女は、恥ずかしがっている場合じゃない、と覚悟を決めた。
それでも気恥ずかしくて、寝台に腰掛けたまま、声をかけた。
「あの・・・少しでも体を休めたほうがいいと思うの。だから、貴方にこちらの寝台を使ってほしいの。ね?お願い」
「君はどうするんだ?」彼は背を向けたまま聞いてきた。
「私は長椅子でもいいけれど・・・ここでも詰めればふたり横になれるわ。貴方に早く怪我を治して良くなってほしいから・・・」
青年は少女に気付かれないよう、そっとため息をついた。
真正面から堂々と、こうも真摯に言われたのでは逃げようがない。
ここで逃げたら、かえって邪な思いを抱いていると強く意識してしまいそうでもあった。
黎翔は振り向いて、軽口めいた口調で言った。
「そんなに私を信じていいのか、君は」
「・・・黎翔を信じられなかったら、私は一体誰を信じればいいの?」
率直でまじりけのない、この上なく純粋な響き。
それは堅く防御していたはずの黎翔の胸を、真っ直ぐに射貫いた。
--かなわないな、この姫君には・・・。
黎翔は降参して、立ち上がった。
長椅子から寝台までは彼の歩幅ならごく数歩だったが、一歩一歩が重たく、遠く感じられた。

彼は剣を枕元に置き、少女が作ってくれた空間に、せいぜい無造作を装って身を据えた。
広々というわけにはいかなかったが、触れ合わずに横になることはできた。それがよかったのか残念なのか、彼にはわからなかったが。
黙っていると妙な気分になりそうで、黎翔は天井を見つめながら口を開いた。
「私が怖ろしくないのか?」
「どうして?」
素性の知れない男と床を一つにするなんて、と言いかけて取りやめた。それでは彼女の真心に対してあまりにも無礼だろう。
彼は抗うのをやめて、代わりに、今自分が感じていることを率直に述べることにした。
「妙な表現だが・・・私は命を狙われていることに慣れているような気がするんだ。普通だったら怯えたり、落ち着きを失ったりするだろう?なのに私は、これが自分のあるべき姿なのだと落ち着くような、むしろ懐かしい心地さえする」
彼はそこで言葉を切って、苦笑いした。
「記憶を失う前の私は、一体どんな人間だったんだろうな」
「黎翔・・・」夕鈴の手が彼の手を探して、重ね合わされた。
彼は目を閉じて、彼に差し伸べられた手を--暗がりに差す一条の光のようなその存在を、己の奥深くで感じ取った。
自分の名前も思い出せない彼に、夕鈴は黎翔という名を与えてくれた。初めて出会ったときの印象が鋭い眼光を宿す狼のようだったから、と。そう言って彼女は『狼陛下』にあやかった名を付けてくれたのだった。
黎翔は華奢な手を握った。彼の手の中に入れてしまうと、その手はますます小さく感じられた。
「私が怖ろしいのは--夕鈴、君だ。君を失うのが、怖い・・・」
「私はずっとあなたのそばにいるわ」
細い指が、彼の指に絡んできた。
彼らはさらに深く、互いの手を繋ぎ合わせた。
「もし、黎翔が大罪人でも。謀反人でも。世界中があなたの敵だとしても。私は、あなたを・・・」
夕鈴はそれ以上続けられなかった。
唇の動きを彼の指にとめられて。
「夕鈴、愛している・・・」
「わたし、も・・・」
「君を得るためなら大罪人になろうとも、構わない」
--うれしい・・・、と可憐に訴える少女を、黎翔は抱き寄せずにはいられなかった。
夜着の上からでもわかる、胸のふくらみ。やわらかな肌。やわらかな香り・・・。
それは若者の理性の奥から感情を引きずり出し、爆発させるには十分だった。
「--過去などどうでもいい、私はこのまま・・・ずっと、君の黎翔でいたい・・・!」
「黎翔・・・」少女はその鈴のような声を震わせた。
それは、彼の望みをかなえようとする呪文のようだった。
彼はその額にキスをした。
「・・・もう一度、私の名を。愛しい姫」
「・・・黎翔」
今度は頬に口付けを落とす。さら・・・と長い髪がさやかな音を立てた。
「・・・ぁ・・・」
「夕鈴・・・、いま一度--」
湿った吐息の中から、黎翔、と呼ばれて。
彼は唇を重ね合わせようとした--
その瞬間、狼は顔を上げた。己の武器を取り、すばやく立ち上がる。
少女がまばたきしている間に、彼は窓の外へ姿を消した。

細い月の光の中、青年は招かれざる客人達に包囲された。
無粋な奴らめ・・・、と彼は歯ぎしりした。
(よりによって今、襲撃してきたことを後悔させてやる・・・!)
ぎりっと黎翔はにらみつけた。
鉄壁をも射貫くような鋭い眼光に、追っ手の一味は凍り付いた。
「・・・私の邪魔立てをする者には、それ相応の代償を支払ってもらおうか・・・?」
青年の口調は物静かといってもいいほどだったが、それでいて聞く者を震え上がらせるほどの威圧感があった。
「あ・・・!?」
なぜだか彼らの頭には、むごたらしい処刑のシーンがまざまざと浮かんだ。
いっそひと思いに殺してくれと訴えたくなるような、凄惨な処刑--それを眉一つ動かさずに命じ、その執行を見下ろしている青年のイメージが。
--こいつに刃向かったら、それは現実になる--!
理屈抜きの直感が、彼らを襲った。
「ううっ・・・!」
ばた、ばたっ・・・
あまりにも大きな恐怖の負荷に耐えきれず、一人、また一人と意識を失い、その場に倒れていった。
冷たい夜風が、怒りに燃えた黎翔の頭を冷やそうとするように吹きつける。
怒りをぶつける対象を失った彼は、急ぎ部屋へ舞い戻った。

「黎翔、無事でよかった・・・!」
彼を出迎えた夕鈴は既に旅支度を済ませていた。つまり、きっちりと服を着込んでいたのである。
寝台もきちんと整えられていて、先ほどまでの甘い雰囲気はもはやどこにも残っていなかった。
「--」彼女の機転の良さ、身じまいの綺麗さが少し恨めしい黎翔だった。
「黎翔・・・?」旅装の少女は怪訝そうな顔をした。
「いや、何でもない。すぐにここを出よう」

こうして二人は旅を続けるのであった--

~終~



例の陛下の超人化現象について、眼光だけで敵を倒すって・・・陛下、一体何があったんだ?よっぽど怒っていたんだろうなあと考えていたら、こんなふうになってしまいました。
きっと毎回このパターンなんだろうなw「いい雰囲気になったところで敵が現れて中断される→怒りの黎翔ビーム(笑)で敵を倒す→旅を続ける」の繰り返し。
王様にあやかって同じ(もしくは似たような)名前を付ける文化と、畏れ多いと避ける文化とあると思うんですが・・・まあそのへんも適当に。
2011年10月20日の修正内容:ラブシーンの進行度を後退させました。


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~ Comment ~

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>慎様 Re: 続編 

たびたびコメントありがとうございます!
慎様は絵を描かれるんですか?うわー、見てみたいです!!
サイトとかお持ちでしたら遊びに伺わせてください♪

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