スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←ふたりの陛下 5(終) →愛の檻
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 愛の檻シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png リレーss
総もくじ  3kaku_s_L.png +小説以外(感想・考察etc)
もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • [ふたりの陛下 5(終)]へ
  • [愛の檻]へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
 

兎女王シリーズ(by深見)

浴を賜る黎翔

 ←ふたりの陛下 5(終) →愛の檻
ユエ様の創作『兎女王と狼将軍』に萌え狂った深見が設定をお借りして書いた、
黎翔×夕鈴の、立場逆転パラレルです。
白陽国の女王・夕鈴の前に臨時男妃・黎翔が誘惑者としてあらわれた・・・!みたいな。
作者様のお許しをいただいてこちらにupします。

追記:残念ながらユエ様は現在サイトを閉鎖されていて、兎女王のオリジナルは読めない状態です。

◇ ◇

白陽国の兎女王と狼将軍が初めて出会った日--
これは、そんなお話。



初めて女王の寵幸を受ける者は、浴を賜るというのが慣わしであった。
後宮の湯殿はさすがに豪奢な造りである。
その広い湯船にひとり浸かりながら、黎翔は息をついた。
湯気に包まれながら、彼は先ほどの女王の謁見を思い出していた。
まさか女王が、彼が下町で見初めた少女だったとは・・・。

『陛下がお健やかであることを示すためにも、通常の夫婦生活を送っていると周囲に思わせる必要があるのです』
側近の李順はそう言っていた。
確かに女王の健康問題といえば、政治上大変重要かつデリケートな話題である。幼少のころは体が弱かったという設定の彼女なら、なおさら気を配る必要があるのだろう。
『ですが、それは表向きのみで結構です。跡継ぎ問題にでも発展しては後々面倒ですので』
要するに、夫婦のふりをするだけで、実際には手を出すな--と釘を刺されたのだった。

だが、女王から手を出されたら--話は別だろう?
女の口から欲しいと言わせればいいだけのこと。
簡単だ。
彼は長めの前髪をかきあげながら、ほくそ笑んだ。
まして、女王は彼が心惹かれた少女とくれば・・・。
下町で見初めたとき、彼女はとても明るく生き生きとしていた。
拝謁したとき、その生気は感じられなかったが。それは女王の身分ゆえに、自らを抑制しているからなのか。
その抑制が解かれたとき、彼女はどんな顔をするのか。
彼の腕の中で、どんな声をあげるのか。
堅苦しい身分を脱ぎ去った彼女は、またあのような生き生きとした姿を見せてくれるのか、あるいは・・・
「これは、思っていたより楽しくなりそうだ」
つぶやいて、彼は湯から上がった。

控えていた侍官から布を受け取り、黎翔は自ら体を拭いた。
「女王はどのような方なのかな」
「陛下は・・・それはお優しく、可憐な方でいらっしゃいます」
若い侍官の声には深い情感がこもっていた。女王に恋慕しているのかと疑いたくなったほどに。
「そうではなくて。わかるだろう?寝所ではどのように過ごすのをお好みかと聞いているんだ。君もお相手をつとめたことがあるだろう」
その侍官が美形だったので、鎌をかけてみたのだが。
「ございません。陛下はそのような・・・戯れに枕を交わすような方ではありませんから」
冷淡な口ぶりの後、彼はすぐに失礼いたしました、と形を改めた。
男妃はふっと口元をほころばせた。
「私は戯れには枕を交わさない方の、お気に召すようつとめなくてはならないということか」
侍官は布を受け取り、男妃の夜着を用意した。
「貴方なら、きっと・・・陛下のお気に召すでしょう」
端正な顔立ちに、均整の取れた長身。若い武官らしく、引き締まった体躯。
後宮においては、容姿の秀でた者など珍しくもない。才覚のある者も少なくない。けれど、この男妃のように他を圧する存在感のある者は、まれだろう。
かたや、当の男妃は--
女王はまだ後宮の風に染まっていないのか、などと考えていた。

黎翔は女王の私室に通された。
女王は文机に向かってなにやら書き物をしていたが、彼の姿を認めるとぴょこん、と立ち上がった。
人払いをしてからも、隠れ場所を探す兎のように、きょろきょろと落ち着かない様子で立ち尽くしていた。
「黎翔、座って」
「陛下が立っていらっしゃるのに、私が座るわけには参りません。陛下がお座りになるなら、私も座りますが」
「・・・わかったわ」
「どうぞ、こちらへ」と黎翔はいざなった。
女王は態度を決めかねるように、文机から離れずそのままでいた。
黎翔は苦笑して、歩み寄った。
「何を書かれていたのです?」
ぱっと取り上げると、紙の上には男の名がずらずらと書き連ねてあった。
「だめよ、見ちゃ!返して!」
「--これは?」
「ここにはたくさんの人がいるから、名前を覚えられなくて、書き留めているの。ねえ、返して?」
ちらっと目を走らすと、女官や下働きとおぼしき者の名まで書いてあった。
「私の名がないようですが」
「珀黎翔でしょ?それぐらい覚えているわ。貴方は私の--」
男妃なんだから、と女王は顔を赤くしてつぶやいた。
「バイトの身分で、はや陛下に名を覚えていただけるとは--光栄です」
黎翔は一礼して、そのままひょいと女王を抱きかかえた。
「はっ、放しなさい、黎翔!」
「下働きの者の名まで覚えようとなさるのは殊勝なお心がけですが・・・せめて初夜ぐらいは、貴女の男妃の名のみを、思い浮かべてくださいませんか」
「しょ・・・って、変な言い方しないで!降ろしてってば!」
彼はすたすたと我が物顔で寝所へ立ち入って--腕の中で女王が身をこわばらせたのを感じ取って、いったん戻った。
長椅子の上に女王をそっと降ろし、自らもその隣に腰を下ろした。
何が起こったのかわからないというような顔をしている女王に、微笑んでみせる。
「失礼いたしました。警護のため、部屋の様子をあらかじめ確認しておきたかったものですから」
「それだったらわざわざ私を抱っこする必要はないでしょ!?」
「陛下をおひとりにするわけには参りませんから」彼は涼しい顔で答えた。
女王は頬をぷーっとふくらませた。御年十六と聞いていたが、そんなふうにしているともっと幼いように見えた。
「・・・その、陛下というのはやめて。あなたは私の素性を知っているのに。なんだか馬鹿にされているような気がするわ」
「では、なんとお呼びすれば?」彼は慇懃な態度を崩さず、たずねた。
「--夕鈴」しぶしぶというふうに、彼女はつぶやいた。
「夕鈴・・・」
彼はその名を舌の上で転がした。
「可愛らしい御名前ですね。貴女をお呼びするのにふさわしい、可憐な響きだ」
「お世辞はやめて。ついでに、その馬鹿丁寧な話し方もやめて」
「御意」彼はニッと笑った。
間をおかずに、夕鈴、と呼び、その手を取った。
「なっ、何するのよっ」 彼女は手を引こうとしたが、黎翔が指を絡めるほうが早かった。
「何って・・・まだ、君の名を呼んだだけだが」
「そうじゃなくて、手っ!手を取れだなんて言ってません!」
きっとにらみつけてくる可愛らしい兎に、やさしく教えさとすように言う。
「これが私の任務だ。君に男あしらいを教えること・・・そうだろう?」
「そっ、それは・・・」
「我が君は初々しくてあられる」黎翔はその手に軽く口付けるまねをした。
それだけで、夕鈴は真っ赤になって。ぷいっと顔を背けてしまった。
もう耳は赤く染まっていて、白い首すじまでうっすらと色づいているように見えた。うなじは長い髪に覆われていて見えなかったが。
--そのうなじに唇を這わせたら、貴女はどんな反応をするのか・・・
黎翔は彼女の小さな手を、自らの胸に押し当てんばかりに握りしめた。
そして、無防備な耳に低くささやいた。
「貴女は、私がお気に召しませぬか・・・?先ほどから私のことをまともに見てもくださらない」
「ちがっ・・・襟!」
「え?」
「襟、もっとちゃんとして!」
夕鈴は黎翔の手ごと、ぶんぶんと手を振った。
黎翔の胸の素肌に触れてしまって、ぎゃーー!!と叫ぶ。
面白い反応に、目が離せない。
黎翔はとりあえず、襟を整えた。
まさか湯上がりのくつろいだ襟元ぐらいでいちいち反応されるとは・・・。これは、仕切り直したほうがいいのかもしれない。
「--これでいいかな、夕鈴。ねえ、そっち見てちゃわからないよ。ちゃんと僕のほうを向いて?」
あら?というふうに、彼女が振り向いた。
「貴方・・・なんだか雰囲気が変わったみたい?」
「うん、今は仕事中じゃないから。君の男妃役はお休み。あ、でも護衛の働きはちゃんとしてるから、安心して?」
相手の心をひらかせたければ、まず自分からだ。
「夕鈴もずっと女王様やってるんじゃ、息詰まるでしょ。でも今は僕しかいないから。夕鈴も羽を伸ばしてくれていいんだよ?」
彼はにっこりと笑って見せた。
夕鈴もつられるようにして、くすっと笑った。
「--ありがとう・・・」
そう言って、彼女は本当に嬉しそうな笑顔になった。ほんわりとあたたかく、ふわふわとやわらかく。
黎翔はつい、毒気を抜かれてしまった。
しばし見惚れていた黎翔を、どう思ったのか。
「あ・・・ごめんなさい」彼女はぱっと笑顔を引っ込めてしまった。
「あ、いえ・・・私の振る舞いがご不興を買ったのでなければ、よろしいのですが」黎翔の構えはつい、一歩引いてしまった。
「ううん、そうじゃないの。貴方が普通に話してくれるのが、うれしくて・・・」
彼女は人を疑うことを知らない子どものようなまなざしで、黎翔を見つめてきた。
こんな人が王宮で生きていけるのだろうか、と誘惑者たる自分を棚に上げて、黎翔はつい、案じてしまった。
彼女の大きな目がじわっと潤んだ。
「ここに来てから、陛下、陛下って・・・みんなとても丁寧で、私の言うことは何でも聞いてくれるし、欲しいものは何でも手に入るし、でも・・・」
夕鈴は笑おうとして失敗したように見えた。悲しみが勝りすぎていて。
涙がひとつぶ、こぼれ落ちた。
「・・・ここには、友達のように一緒に笑ったり、泣いたりしてくれる人は、いないのね。--誰も、いない・・・」
澄んだ瞳は、黎翔を見ているようで見ていなかった。
その目はここではないどこか遠くの世界を--帰ることの出来ない故郷をさまよっているようで--
黎翔は、その美しい瞳に、自分を映したい衝動に駆られた。
「夕鈴・・・、僕が、いるよ」
「・・・黎翔・・・?」夕鈴はまばたきした。
彼女の目が自分に戻ってきたのを感じて、黎翔は安堵感に包まれた。
同時に、彼女の孤独を理解した。
貴族ですらない庶民の少女が、いきなり女王になったのである。王位に就いた者の宿命とはいえ、人との繋がり、それも横の繋がりをすべて絶たれてしまうのは、年若い少女には酷だろう。
「夕鈴・・・」
自分の存在を感じ取って欲しくて。黎翔は彼女の手を取った。
白い指先にぽつんと黒い墨のあとがあった。先ほどの書き付けが思い出された。
あれほど多くの人間に囲まれて、その名を覚えようと密かに努力までしているのに・・・。
そう思うとなんだかたまらなくなった。
この人のために何かしてあげたい--そう思わされるのは、彼女が女王だからなのか、それとも・・・
「君には僕がいる。いつも君のそばいにいて、一緒に笑ったり、泣いたりするよ」
夕鈴は手を取られても抵抗するでもなく、ぽかんと黎翔を見つめていた。
反応のなさに、黎翔はらしくもなく不安におそわれた。
「・・・僕は、ただのバイト男妃だけど・・・僕じゃだめかな・・・?」
「ううん、そんなことない。うれしい・・・」
夕鈴は満面の笑顔で答えた。
「ありがとう、黎翔・・・貴方が来てくれて、よかった・・・」
彼女は深いため息とともに、もたれかかってきた。
疲れきっていて、ただ少し休ませてほしいというように。
寄りかかってきた体はとても軽くて--儚いほどだった。
「夕鈴・・・」
黎翔はその細い体を抱き支えた。
夕鈴は抗わなかった。ため息をつくように、息を震わせていたかと思うと--声を殺して泣きはじめた。
黎翔はさらに抱き寄せた。
小さな肩だった。

この小さな肩に、なんと重いものを背負わされているのだろう・・・。
ふいに、強い思いがわきあがってきた。

守りたい--

この、小さな肩を。
肩を震わせて泣く、彼の女王を。

黎翔は体が熱くなるのを感じた。
それは、体の表面だけが熱くなるのではなく、体の奥底から--己の存在の根幹から力がみなぎってくるような感覚だった。

~終~



本編の作者様に捧げます。ぬるくてすみません!
誘惑者・黎翔を書いていて、途中から忠臣モード入っちゃいました。いや、ちゃんと恋にも落ちてるんですよ?深見は実は三国志とか好きなので、ついふらふらと忠臣を書いちゃう病のようです(ってどういう病気だ)
我が君(自分の主君のこと)って言葉、好きなんですよねv我が妃の代わりに言ってほしい!
途中の侍官とのやりとりは、なんで入ってきたのか書いている私にも謎です。他者から見た湯上り黎翔を書きたかったのか?夕鈴の近くに美形を侍らせたかったのか?みんな夕鈴に恋しちゃえばいいよ!と思ってるのか?(笑)


もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 愛の檻シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png リレーss
総もくじ  3kaku_s_L.png +小説以外(感想・考察etc)
もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • [ふたりの陛下 5(終)]へ
  • [愛の檻]へ
  • Tag List 
  •  * |
 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント:投稿可能です。
  • [ふたりの陛下 5(終)]へ
  • [愛の檻]へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。