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 ←【感想】ララDX 紅珠から見た陛下と夕鈴の話 →浴を賜る黎翔
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ふたりの陛下/連続ss

ふたりの陛下 5(終)

 ←【感想】ララDX 紅珠から見た陛下と夕鈴の話 →浴を賜る黎翔
二人は激しく剣を交わしたかと思うと、すぐに離れ--そしてまた剣を合わせることを繰り返した。
まったくの互角。
剣の技量、性質、癖--何もかも同じで、どこにも差はない。
互いに、相手の次の行動が読めてしまう。
勝負は、決め手に欠けて長期戦になるか、あるいはごく些細なことでも決め手となって、短時間で決着がつくかのどちらか--
キン--とひときわ高い音を立てて、はじかれた剣が宙を飛んだ。
小犬陛下の剣だった。
「得物の差だな」
勝者は余裕の笑みを浮かべて、敗者を追い詰めた。

その瞬間、ばしゃっと横殴りに水が飛んできた。
「やめてください!二人とも」
そこには、大きな花瓶を持った夕鈴が立っていた。その足下には、色とりどりの花が散らばっていた。
・・・白、桃色、赤、黄色・・・
花の中に凛然とたたずむ夕鈴は、犯し難い気品が漂っていて、人の力の及ばぬ何か貴い存在のような--花の咲き乱れる天界に住まう天女を思わせて--狼陛下は見惚れてしまった。

その隙に、夕鈴は二人の間に割って入った。
狼陛下は、はっと我に返った。
「そこを退け、夕鈴」
「いやです」と狼陛下へ向かって言う。
「夕鈴、ここはいいから。君は向こうへ」
「いやです」と小犬陛下へも言い放つ。
「夕鈴。--私が自分自身を制御できる内に、退くんだ」
狼陛下の声は低く重く--まぎれもなく、最後通牒の響きがあった。
夕鈴の背中はぶるっと震えたが、その足は一歩も動かなかった。
--何故、と狼陛下が独り言のようにつぶやく。
「私が怖ろしくないのか、夕鈴。--ずっと『狼陛下』を怖がっていた君が・・・?今このときに--」
一瞬、彼が泣いているように見えて、夕鈴は胸を突かれた。
--まさか、狼陛下が?ううん、花瓶の水よね・・・?
彼は、皮肉とも自嘲ともつかない酷薄な笑いを浮かべていた。
なのに、夕鈴を見る目は、とても悲しそうだった。まるで、群れからはぐれてひとりぼっちになってしまった狼のように。
「--母は強し、ということか・・・」
「は・・・?」
夕鈴が陛下の言葉を理解するのに、間が空いた。
「あの・・・母って誰がですか?」
「隠さなくてもよい。・・・子を宿している婦人の目に、物騒なものを曝すのは好ましくあるまい」狼陛下はため息をついて、静かに剣を鞘に納めた。
「夕鈴、それ、本当なの・・・?」小犬陛下は真っ青な顔をしていた。
「お前は喜ぶべきだろうが」
「なんでだよッ!?」
小犬陛下の悲痛な叫びに、狼陛下は態度を変えた。
「・・・お前ではないのか?」
「君じゃあるまいし・・・って、君じゃないのか?」
「では、」「じゃあ、」
「「一体誰が・・・」」
二人の視線が夕鈴に集中した。夕鈴は体に穴が開くんじゃないかと身の危険を感じた。
「ちょ、ちょっと待ってください、お二人とも。一体何の話をしているんですかっ!?」
「先ほど老師から、妃に懐妊の兆しありと告げられたのだが」刑の宣告を受けた罪人のような暗い面持ちで、狼陛下が答えた。
「~~~~~っ。そんなの嘘に決まってるじゃないですか!! お二人とも、何考えているんですかっ。老師の言うことなんか、真に受けちゃダメですっっ」
老師の希望的観測(?)と、目の前の夕鈴本人の迫力では、どちらが勝るのか言うまでもない。
「「・・・はい」」二人とも聞き分けよく返事した。
待て、と狼陛下が小犬陛下に言う。
「なぜお前が夕鈴の部屋にいる」
「僕の部屋は今日、女官が衣替えの仕事するから。言ってなかったっけ?」
「聞いていたような気もするが・・・では、夕鈴。君はなぜ寝所で服を脱いでいた」
「これは、服を汚してしまったので着替えようと・・・その、こちらの陛下の目の届かないところでと思って、ここで」
「・・・そうか」狼陛下の顔は、ゆるゆるとほころんでいった。
「じゃあ何か、君は、夕鈴と僕が・・・って誤解していたわけ?」
「・・・まあ、そうだ」
そこで狼陛下は何か思い出したように、再び眉をひそめた。
「お前は妙なことを言ってなかったか、美味しかったとか、どうとか・・・」
「ああ、それは肉まん・・・」しまった、と小犬陛下は言葉を濁した。
「肉まん?何の話だ」
「えっと・・・」
二人のやりとりを見ていた夕鈴は、とりあえず危機的な状況は脱した、と胸をなでおろした。
「私は花瓶の後始末してきますから。ちゃんとお二人で仲直りしてくださいよ?」
二人に注意しながら、歩き出した。
進行方向は見ていなかった。
水浸しになっている床の上で、足がずるっと滑った。
「「危ない!」」



足を滑らせたと思ったけど。お尻も、足も、どこも痛くなかった。
目に映るのは、部屋の天井。
背中がぐっと押し上げられたかと思うと、夕鈴はずるずると滑り落ちるようにして、床に尻餅をついた。
「夕鈴、大丈夫?」
陛下は床に腹這いの格好をしていた。
どうやら滑り込んで夕鈴のクッション代わりになってしまったようである。
「陛下こそ、大丈夫ですかっ?」
「僕はなんともないよ」
夕鈴はあれ?と気づいた。「もうひとりの陛下は?」
「ん?--ああ、元に戻ったみたい」
「戻ったって・・・本当ですか?」
「うん。なんか、記憶がひとつになった。君が危ないと思ったら--体が動いて、気づいたらこうなってた」
「よかった・・・」
夕鈴は尻餅をついた格好のまま、深いため息をついた。
ぽろっと涙がこぼれた。
狼陛下に脅されたときでも出なかった涙が、あとからあとから出てくる。
陛下は床に手を着いたまま、同じ目の高さのまま言葉をつむいだ。
「夕鈴、ごめんね。怖い思いさせちゃったね」
「いえ、これは・・・なんかほっとしちゃって・・・嬉し涙だから、気にしないでください」
夕鈴はごしごしと袖で目をこすり、照れ隠しにちょっぴり笑った。
それを見ていた彼の眉が切なげに曇る。
「・・・ごめんね。君には、迷惑も心配もいっぱいかけた」
夕鈴は首を横に振った。
「私、うれしいんです。さっきは、すごく悲しくてつらくて・・・好きな人同士がケンカしてるのって、つらいです。私はどちらの陛下も好きだから・・・」

あふれる涙で、陛下の顔が見えなくなる。
瞬きをして、陛下の顔が見えたかと思うと、また見えなくなる。
涙を止めることはできなかったので、夕鈴はその分にっこりと笑顔を作った。

ふと、目のすぐ下に、何か生暖かい感触があった。
「塩の味がする」
--え?
目元を舐められたのだと理解するのに驚くほど時間がかかって--かかった分、羞恥が怒濤のように押し寄せた。
「な、な、なっ----」
「美味だ」狼は不敵な笑みを浮かべていた。
「なんですか、いきなり人の顔なんか舐めて!」
「珠のように美しい涙まで、私のものにしたくなってしまった。・・・罪作りな泣き顔だ」
手が頬に伸びてきて、夕鈴は後ずさった。
しかし狼陛下はいつにもまして余裕たっぷりに、艶然と微笑んで。手でそろりと這いながら、獲物を狙う。まさに、狩の最中の獣のごとく。
「君はどちらも好きだと言ったろう?・・・この私も」
「そっ・・・それは、そうですけど、そういうんじゃなくて!!」夕鈴はあわてふためいた。
ぷっ、と陛下が吹き出した。
初めは体をぷるぷる震わせていたが、やがてお腹を抱えてけらけらと笑い出した。
「・・・陛下、ウケすぎです!」
「いや~、ごめんごめん」
目元を指で拭きながら、まだおかしそうに笑っている顔は、いつもの陛下のもので。
「いつもの夕鈴だなあ、と思ったら、なんだか・・・僕もほっとしちゃったよ」

--たとえこの身が二つに分かれるようなことがあっても。
僕の帰るところは、君だった・・・

夕鈴は怒りがさめやらないのか、まだ頬をふくらませていた。
しかしその頬にも、目元にも、泣いた跡が歴然と残っている。
彼のために流された涙の跡。
彼はそれをいとおしげに見つめた。
「・・・あの、陛下。あんまり見ないでください」
「なんで?」
「ひどい顔になってるでしょう。顔、洗ってきますね」
「いいよ、そのままで」
立ち上がろうとした夕鈴の手をつかんで、留める。
「・・・夕鈴は、そのまんまでいいから」そう言って彼はにっこりと笑った。
「陛下・・・」
はた、と夕鈴は自分がまだ着替えの途中だったのを思い出した。
あわてて手を振り払って、立ち上がる。
「いやです、今、着替えてきますから!」
「えー?」

白陽国の後宮の奥深く--人少なく、もの寂しいような後宮で、妃の部屋だけはにぎやかだった。

~終~



狼陛下、立ち直り、はやっ(笑)
嫉妬に燃え狂う狼陛下というのを見てみたくて。
で、土壇場になったらやっぱり夕鈴の愛が勝つんだろうなあと。
夕鈴が滑ったところを抱きとめてもよかったんですが・・・それだとまた寝所へ連れ込まれそうになったのでやめました(笑)
ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございます。お疲れ様でした。
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