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ふたりの陛下/連続ss

ふたりの陛下 3

 ←ふたりの陛下 2(10月7日更新) →ふたりの陛下 4

陛下が二人になってから、しばらく経ったある日のこと。
夕鈴は自室の文机の上に、文房具などを支度していた。
「陛下、こんな感じでよろしいでしょうか?」
「うん、十分だよ。今日だけだから」
小犬陛下は書類を持って、妃の部屋に来ていた。今日は王の私室に人を入れるので、移動したのである。
「そんなにたくさん、お仕事されるんですか・・・?」小犬陛下の持参の書類を見て、夕鈴は思わず聞いてしまった。
「あー・・・うん、ごめんね。本当はさっさと終わらせて夕鈴と遊びたいんだけど」
二人になった分、楽になったのはあくまで一時的な話で。
仕事が速くなればなったで、次々と新しい仕事が押し寄せる。
結局、忙しさは以前と変わらなくなってしまった。

小犬陛下は仕事に向かったものの・・・もともと嫌いな書類仕事がこう毎日続いては、さすがにげんなりしてくる。
彼は手を止めて、机の上に突っ伏した。
(くっそ~、狼のやつにも手伝わせてやろうと思ったのに・・・)
狼陛下のスケジュールを聞いてみたのだが、あちらも同様で忙しいらしい。
は~、と彼は今日何度目かの盛大なため息をついた。

それを見ていた夕鈴は、陛下のために自分にも何かできないだろうかと考えて。
「あのー、陛下?おやつに肉まん作ったら、召し上がりますか?」
「え?夕鈴が作ってくれるの?食べる、食べるー!!」瀕死状態だった小犬ががばっと起き上がった。
「そんな、期待しないでくださいね」
「ううん、夕鈴が作ってくれるってだけでうれしいよ!仕事がんばっちゃおうかな!」
現金な小犬はぱたぱたとしっぽを振った。



国王陛下の私室では、女官たちは衣替えの作業をしながらおしゃべりしていた。
「ねえ、どう思う?最近のお妃様は、心なしかお顔の色が優れないような気がするのだけれど」
「そうねえ・・・ご病気ではないようだけど。ご病気なら普通は食欲をなくされるはずでしょ?お妃様付きの侍女の話では、最近は二人分召し上がっているそうよ」
「--もしかして、それって・・・?」
「もしかしたら・・・もしかするのかしら?」
「きっとそうよ!だってここのところ、毎晩のようにお召しだったじゃない!」
「ついにお世継ぎ様のお顔が見られるのかしら?」
女官たちはきゃあきゃあと盛り上がった。部屋の物陰に潜む小柄な影には気付かずに。
後宮管理人はしっかりと盗み聞いていた。
(この後宮でわしの知らぬことなどないのじゃ・・・!)



予定されていた外国の使節が、途中、河川の氾濫で足止めされたとかで来られなくなり。
ふいに時間のできた狼陛下は、早速愛する妃のもとへ向かった。
後宮にさしかかったところで、老師に出くわした。
「おめでとうございます、陛下!!」
老師の小柄な体は、いつにもまして景気よくぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「いやはや、年寄りが心配することはなーんもなかったわけですなっ」
「何のことだ。わかるように言え」狼陛下はイラ、としながら命じた。
「妃にご懐妊の兆しありとか・・・!いや、わしとしたことが、嬉しさのあまりフライングしてしまいましたっ。後ほど御医を伺わせますので!あ~忙しくなるの~!!」
老師はうきうきしたステップを踏みながら、嵐のように去っていった。

取り残された狼陛下は、首をかしげつつ歩き始めた。
懐妊・・・?
どうせ老師の思い違いだろう。呆けてしまって願望と現実の区別が付かなくなったのだろうか。
私は(そういう意味では)ゆうりんに触れていないのだし。
そこまで考えたとき、足がはたと止まった。

私は触れていない。
だが、小犬のほうはどうだ?
狼陛下の脳裏に、いつかの小犬陛下とのやりとりが浮かんだ。

”僕だって夕鈴といちゃいちゃするよ?君が政務に励んでいる間にね”
”夕鈴は否と言うに決まってる”
”さあ、どうかな。僕は君と違って、夕鈴に怖がられてないし”

まさか・・・。
そういえば、小犬のほうが、最近やけにこちらの予定を確認してくるような。
今日はいつごろ仕事が終わりそうかなどと、まるで、自分が帰ってくる時間を把握しておきたいというように・・・。

狼陛下は自室に戻ったが、その時間帯、そこで書類仕事しているはずの小犬陛下の姿はなかった。
彼は妃の部屋に向かった。

◇ ◇

--時間は少しさかのぼって、狼陛下が帰って来る前、妃の部屋はどんな様子だったのかというと--

夕鈴は卓上におやつのしたくをした。小犬陛下はわくわくと目を輝かせて待っている。
「あのー、本当にたいしたものじゃないんですけれど・・・」と前置きして、夕鈴は容器のふたを外した。
ほかほかと湯気が立ち上り、わ~!と歓声が上がる。
「えーと、こちらが肉まんで、こちらがあんまんです」
「おいしそう!いっただっきま~す!」
彼は早速肉まんをほおばった。
「うわっ、汁がすごいね!」
小犬陛下の食べっぷりを見ていて夕鈴は嬉しくなり、もっとたくさん作ればよかったかも、と少し後悔したぐらいだ。
夕鈴は、小犬陛下の分と、自分の分と。それからもうひとつの皿に、肉まん・あんまんを取り分けた。
「あれ?それ余り?余ってるなら、僕が食べるよ」
「いえ、これは狼陛下の分ですから」
「そっか」
「よかったらこちらをどうぞ」と夕鈴は自分の分を差し出したが。
「えー、いいよ。夕鈴食べなよ。すっごくおいしいもん」
「そうですか?」
「うん!夕鈴のは最高だよ!これを食べたら、もうほかのは食べられなくなっちゃうね!」
「そんな、おおげさですよ~」
肉まんを食べ終わった彼は、早速あんまんに手を伸ばした。
陛下は毒味後の冷めた食事に慣れているため、割と猫舌である。ゆうりんは言葉を添えた。
「あんまんのあんは熱いから、舌をやけどしないように気をつけてくださいね」
「は~い」
小犬陛下はあんまんを割って、断面をふうふうと冷まし始めた。
かわいらしい小犬陛下の様子に和みながら、夕鈴はお茶をすすった。

--もし狼陛下の帰りがもっと早くて、ここで帰ってきてたら、三人でおやつを食べるというほんわかシーンになっていたのかもしれないが・・・運命の歯車はそれとはまったく逆の方向へ回り始めるのであった。

おやつを食べ終わった小犬陛下は、文机に戻って。
「さー、夕鈴の手作りおやつも食べて元気になったし!がんばって仕事するよー!」と朗らかに宣言した。
「何かお手伝いできることありませんか?」
「んー、そうだね。墨をすってくれる?」
「はい」
夕鈴は彼の傍らに座って、せっせと墨をすり始めた。
栄養補給したばかりの小犬陛下はとってもご機嫌で、ふんふ~ん♪と楽しそうである。
彼はぺったんぺったん書類にはんこを押していたが、その中の一枚がはらりと机から落ちた。
夕鈴はそれを拾い上げて、ふと気がついた。
「陛下、そんな剣、お持ちでしたっけ」
「うん。いつも使ってるやつじゃないけど。ずっと剣を佩いてないと、腰のあたりがさみしいというか、なんだか体の平衡感覚が狂うような気がしてさ」
「へー、そういうものなんですか」
「剣は腰の左に帯びるものと決まってるからね。だから僕、右より左の太もものほうが筋肉が付いてて少し太いんだよ。--見てみる?」
そう言って彼は、裾をそっとめくるしぐさまでしてみせた。
「もお、からかわないでくださいっ」
「あはは、ごめんごめん。・・・夕鈴、袖!」
「え?」
指摘されて見ると、袖口が黒く染まっていた。取り乱した拍子に墨がついてしまったようである。
「ごめんね、夕鈴。僕が変なこと言ったから・・・」
「いいえ、私の不注意ですから」
白い布地に黒い染みはかなり目立つ。主婦・夕鈴は己の痛恨のミスを深く嘆いた。
どんよりと落胆する夕鈴を見かねたように、小犬陛下はうながした。
「夕鈴、ここはいいからさ。早く着替えておいでよ」
「すみません、じゃあちょっと・・・」
夕鈴はどこで着替えようか思案をめぐらした。
袖口から中へも墨が入ってしまっているので、全身まるごとお着替えコースである。なんとなく、小犬陛下から遠く離れたところで着替えたい。
「手伝おうか?」
「遠慮しますっ」
夕鈴は手早く着替えをかき集めて、小犬陛下の目の届かない、自室の奥まった場所--寝所へ駆け込んだ。

--狼陛下が来る少し前に、妃の部屋で起きていたのは、だいたいこんなことだった。

<つづく>



小犬陛下がやりたい放題。狼陛下はかわいそうかも。
深見は”夕鈴を想うがゆえに苦しみもだえる狼陛下”が大好物なものですから。5巻の陛下は美味しかったわー。
お侍さんはいつも刀を差しているから左足の方が太いというのは、確か岡本綺堂の時代小説で読んだネタです。陛下はいつも差してるわけではなさそうですが。

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