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短編

はじめての 3

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あんな口付けされて動揺してるようじゃ、ダメなんだ。そう思い知らされた気がした。
お色気美人--かつて浩大が口にした言葉を、夕鈴はしっかり覚えていた。
やっぱり、そうなんだ。陛下の隣にいるのは、そういう人がふさわしいんだ。
陛下に・・・あんな口付けを、されても。ちゃんと合わせられるような、見た目も陛下とつりあうような、そんな女性が。
・・・私、全然、資格ない・・・。

寝台の端に座っていた陛下が、少しずれて、距離が縮まった。
「夕鈴。聞いて。プロ妃とか、そういうんじゃなくて。そのままの夕鈴で、僕のそばにいて欲しいんだ」
「・・・わかりました」
夕鈴は覚悟した。
「やっぱりバイト妃はクビですよね。これからは掃除婦としてがんばりますので、よろしくお願いします」
「ちょっと待って。なんでそうなるんだ」
「プロ妃じゃなくて、そのままの私でって・・・掃除婦のバイトですよね?」
「違う!妃としてそばにいて欲しいんだ」
「え・・・?」夕鈴は理解できずにぽかんとした。
「念のため付け加えておくが、バイトではなく、本物の妃としてだ」狼陛下は一言一言ゆっくりと発した。
「あの・・・また特訓か何かですか?」
「・・・夕鈴。私はこれ以上ないほど真剣なのに、何故わかってくれない?」
「だって、今、狼陛下・・・」
「ああ・・・そうか。--つまりね」
陛下は器用に小犬陛下に戻った。
「狼陛下も、僕の本性なんだ」

え。
今、なんて?
狼陛下は演技じゃないの?
「うそ・・・」
「わざと強調しているときもあるけど、演技ではなくて素だよ。僕のもうひとつの面なんだ」
まさか、という思いと、やっぱり、という思いが交差する。
呆然とする夕鈴に、陛下は決まり悪そうに続けた。
「ごめんね。騙すつもりじゃなかったんだけど・・・言いそびれちゃって」
「そんな大事なこと、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか」
「・・・君は狼陛下を怖がっているから、逃げられちゃうと思って・・・言えなかった」
「そんな・・・」
「ごめん、夕鈴・・・」
陛下は絶句した夕鈴が怒っていると思ったのか、再び謝ってくる。
違う。
謝って欲しいんじゃない。
私が怒ってるのは、陛下に隠し事をさせた自分自身。
騙されたという怒りはなかった。ただ、自分がそうさせてしまったのだと思うと、悲しかった。
夕鈴は寝台の上に膝を付いたまま、横から陛下を抱きしめた。
「・・・夕鈴?」
「・・・陛下は全然わかってない」
「え?」
私は逃げたりしないのに。私は陛下のそばにいたいのに。
夕鈴は勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「私、逃げたりなんか、しません」
陛下は自分にまわされた夕鈴の腕に、そっと手をかけた。
「無理しなくていいよ、夕鈴」
陛下は夕鈴が虚勢を張っているとでも思っているようで。明らかに気遣っていた。
それで、つい、夕鈴の口はさらにすべってしまった。
「無理してません。私・・・狼陛下のことも、好きだから・・・」
夕鈴は陛下の顔を真正面から見据えた。
陛下はきょとんとしていた。ぱちぱちとゆっくり瞬きをする。
「・・・そうだったの?君は怖がっているんだとばかり思ってた」
「怖かったですけど・・・でも、どきどきしてました」
「それは、恐いからじゃないの?」
「違います。・・・好きだから、です」
陛下が好きだから。
そのことに気付くのに、夕鈴自身、どんなに時間がかかったことだろう。
告白してしまった気恥ずかしさで、夕鈴はうつむいた。
小犬陛下はくすっと笑う。
「今の僕には?どきどきしてくれる?」
「ずっと、どきどき、してます」
「夕鈴・・・かわいい」
陛下の手がすっと頬に触れてきた。手の甲が、肌をかすめるように、ゆっくりとなぞる。
陛下の手のひらが頬を包む。それが合図のように、まぶたが自然に降りた。

それは、そっと触れて体温を確かめるだけのような、ひかえめな口付けだったけれど。
心の底から、体の芯から--幸せだった。

陛下とはすでに、事故で口付けしちゃったし。
衆人環視の中で、演技でもしちゃったけれど。
これが私の本当の『はじめて』なのかな・・・。

ぱっ、と急に陛下が離れた。
「・・・陛下・・・?」
「夕鈴・・・嫌か」
夕鈴は首を横に振った。
そのとき、自分の頬が濡れているのに気付いた。
「違うんです、これは・・・うれしくて」
夕鈴は笑おうとした。だが、うまくいかなかった。また頬が濡れてしまったから。
「陛下が・・・貴方の心が、とても近くに感じられて・・・だから」
「・・・そうか。私もだ」
陛下が微笑んだ。氷が解けていくような、あたたかな表情だった。


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