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短編

後宮百景

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すみません。深見はとにかく夕鈴がモテモテの話を書きたかったらしい。1巻の第4話から発生した妄想。
オリキャラ(王宮の庭師見習いの少年)視点。やや走り書き。
それでもいいよ~という方、どうぞ。





は~・・・。
少年は庭の手入れをしながら、ため息をついた。
王宮の庭は広い。彼が任されているのはほんの一角だった。

彼は自分が手入れしている花をじっと眺めた。
華やかさはないが、慎ましくて可憐な花だと思う。
地味でつまらない花と思われているけれど、食べられておいしいのに。飢饉とか、篭城戦のときなんか、すごく役立つのになあ。
まあ、狼陛下の王宮を攻める軍隊なんて、いないだろうけど。
やんごとなき身分の方々の争いは絶えないようだけれど、庶民の生活には関係なかった。
せいぜいが地方で起こる小さな反乱ぐらいで、大きな戦なんて絶えて久しい。
でも、そんな一見平和なときでも、そういう備えを忘れてはいけないと思う。政に近い王宮の人間こそ、そういうふうに考えるべきじゃないかなあ。
庭師見習いがそんなこと考えても仕方ないけどね、と彼は作業に戻ろうとした。

そんなとき、女性の声がした。
「あら?この花・・・」
振り向くと、綺麗な衣装の女の人がいた。
後宮の女官だ。しかも身なりからすると、かなり上の方の位っぽい。彼はどぎまぎしながらわきに控えた。
ところが、女官はそういったことにまったく頓着しないようで、にこにこしながら話しかけてきた。
「もうこの花が咲く季節になったのね」
「はい。今が見頃です」
彼女はあたりを見回して、歓声を上げた。
「こんなにたくさん咲いてるの?素敵ね」
そのひとがあんまりうれしそうに言うものだから。彼は照れくさくなりながら、恐れ入ります、とつぶやいた。
「あなたが育てているの?」
「はい、まあ・・・」
「これ、美味しいのよね」
「よくご存じですね」
彼は驚いた。こんなに若い女の人なのに。こんな綺麗な格好をして、何も悩みがなさそうに見えるけれど。
この人は、ちゃんと、わかってるんだ。もしかしたら武官の家柄の人なのかな?
しかしそれを聞くのはためらわれた。家柄とか、身分とか、そういうことに触れたくなかった。なんとなく。
「スープにしても美味しいのよね」
「はい。このままでも召し上がれます」
なんだか・・・面白い人だなあ。話しやすいっていうか。後宮の女官なんて、みんな澄ました感じの人たちばかりかと思っていたけれど。
すごく美人とかいうのでないけれど、笑うと、本当に周りが明るくなるような感じがする。
まるで栗鼠みたいに表情がくるくると豊かに変わる。
年上の人なのに、なんか、かわいい。
二人はしばらく会話を続けていた。
じゃあね、と女官は去ろうとした。
「あの・・・またお会いできますか」
「ええ。明日もこの花を見に来るわ」
女官はにっこりと笑った。社交辞令ではなく、あたたかい笑顔だった。


その夜、少年は興奮してなかなか眠れなかった。
あのひとが来る。
僕の育てた花を見に来てくれる。
早く明日になればいい。
明日はどんなことをお話しよう。
わくわくしながら、少年はいつしか眠りについた。


次の日、彼がその場所を訪れたとき、花はなかった。
彼は眼前の光景が信じられなくて、立ち尽くした。
--ない。
どこにも、ない。
すべて摘まれている。
一体誰がこんなことを・・・?
呆然と立ち尽くしていると、後ろからがしっと肩を抱かれた。
「浩季!でかした!」
「父さん?」
「お前の育てた花が、なんとお妃様のお目に留まったそうだ。先ほど侍女の方がすべて持っていかれた」
「え?」
侍女って・・・もしかして、あのひとが?
「あちらに陛下とお妃様がいらっしゃるぞ」
父は膝を付いて礼をとった。
浩季もそうするべきだったのだが--彼は見てしまった。
彼女は、背の高い青年に寄り添うようにして歩いていた。
周りの人たちの様子からして、それに男の人とあんなふうに一緒にいるってことは・・・。
あれは、陛下と、お妃様だ。
あのひとが、お妃様!?
嘘だ、だってお妃様は・・・他のお妃様を知っているわけじゃないけれど・・・あんなふうに笑ったりしないと思う。
あんなふうに、楽しく話せたりとか、しないと思う。
嘘だ、嘘だ--彼は心の中で叫び続けた。
陛下がお妃様を抱きかかえたのが見えた。何を話しているのかは聞こえないけれど、お二人が仲睦まじいのは遠目にもよくわかった。
その光景は彼の否定の叫びを容赦なく封じた。



夕餉の時間になった。
食卓は、少年の育てた花がお妃様のお目に留まったことで盛り上がっていた。
「お前に何か褒美をやらなきゃな。何がいい?」庭師頭である父が上機嫌で聞いてきた。
「僕は・・・」
彼の脳裏に、妃の姿が浮かんだ。
「父さん。お願いがひとつあるんだけど」
「おう、言ってみろ」
彼は父の目を真っ直ぐに見て、告げた。
「お妃様に捧げる花を、育てたい」



朝靄の中、彼は最も盛りを迎えている花を選び出した。

あのひとの髪を飾る花。
お前がうらやましいよ。たとえ一日限りの命でも、あのひとに触れることができるのだから。
・・・どうか美しく咲いておくれ・・・

ぱちん

彼は花を摘んだ。


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