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 ←【感想】第38話 →◆◆3 君に望みを
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短編

昔の女

 ←【感想】第38話 →◆◆3 君に望みを
夕鈴はまだバイト妃。
勝手に作っちゃった設定あり。






夕鈴は陛下の部屋で、その箱を見つけた。

美しい細工がなされた小箱。
陛下の部屋には珍しい女性的な意匠の品だったので、気になっていじっているうちに、ふたが開いた。
箱の中には、黒くまっすぐな毛を丁寧に束ねたものが入っていた。
誰かの遺髪かしら、と夕鈴は思った。
こんな綺麗な箱に大切にしまってあるなんて、よほど思い入れのあるものなのだろう。勝手に見てはいけなかったかもしれない。
思い惑っていると、後ろから声をかけられた。
「どうしたの、夕鈴」
陛下はすばやく夕鈴の手元に目を走らせた。夕鈴は急いで謝った。
「すみません、勝手に見ちゃって」
「構わないよ、別に」陛下はにこ、と笑った。
夕鈴は思い切って聞いてみた。
「これはどなたの・・・?」遺髪でしょうか、という言葉は控える。
「ああ・・・彩花のだ」
陛下の口から女性の名が出て、夕鈴は聞き逃せなかった。
「その・・・聞いちゃいけないことだったらいいんですけど。彩花さんっていうのは・・・?」
「夕鈴には話したことなかったね。昔・・・僕を支えてくれた、僕にとってはかけがえのない友だ」
昔を思い出したような陛下は、とてもやさしいまなざしをしていた。
夕鈴の胸はずきんと痛んだ。
今まで陛下の女性関係をまったく気にしたことがなかったと言えば嘘になる。
陛下は、離宮で女官にかしずかれていたときも、宴で舞姫を侍らせていたときも、とてもさまになっていたし。
王様だし若くてかっこいいし、女性なんてよりどりみどりなんだろうけれど。
それでも、陛下が真に心を許した女性はいなかったのではないかと、夕鈴はなんとなく思っていた。その思い込みが無残に崩れていく。
(ううん、待って!友ってことは、もっと精神的な・・・お母さん代わりとか、そういう人かもしれないし!)
「陛下にお仕えするぐらいだから、とても・・・綺麗なんでしょうね」夕鈴は言葉を選びながら慎重にたずねた。
「うん。優美で気品があって--初めて会ったとき、僕は一目で夢中になった」
否定して欲しかったのにあっさりと肯定され、夕鈴はがん、と頭を叩かれたような衝撃を受けた。
陛下はそれには気付かないようで、やわらかな声でぽつぽつと昔語りを続けた。
「濡れたような黒い瞳が可愛くてね。僕に甘えてくれるのがとてもうれしかった。砂糖菓子が大好きだったな。よく僕の手から食べさせてあげたよ」
夕鈴の頭の中には、黒髪の美女と陛下が睦まじく戯れている様子が浮かんだ。
陛下にしなだれかかる美女。陛下は彼女の紅い唇に小さな菓子を運んで。ふたりは甘く見つめあう。
それほど愛していた女性なら、なぜ--
「今どこに・・・どうして一緒にいないんですか?」疑問が口をついて出た。
陛下の表情が曇った。
「今は・・・もういない。亡くなったんだ。僕のせいで」
「すっ、すみません!・・・え?陛下のせいって?なんでですか?」
「風土病にかかったんだ。できる限りのことはしたんだけれど・・・助からなかった」
陛下は視線を落とし、自分の手のひらをじっと見つめていた。彼女は、陛下の腕の中で息を引き取ったのだろうか。愛する人に先立たれて、陛下はどんなに悲しかっただろう・・・。
「でもそれは、陛下のせいじゃないですよ」
夕鈴が慰めても、陛下の表情は変わらなかった。
「彩花が病を得たのは遠征先だ。・・・彩花は繊細なところがあったし、そもそも戦場に連れて行くべきではなかったんだ。わかっていたけれど・・・僕は彩花を連れて行きたくて、無理を通してしまった」
「・・・・・・」
夕鈴は愕然とした。
何よりショックだったのは、陛下が彼女を戦場まで同行していたことだった。
それだけ彩花という女性は陛下に信頼され、必要とされていたんだ。後宮でぬくぬくしているだけの自分とはなんて違いだろう。
あまりの格差に、もはや嫉妬する気さえ起こらなかった。
ただ、彼女がうらやましかった。死してなお陛下の心に住み続ける昔の女(ひと)が。
--私はバイト妃で、線引きされていて、陛下は何も相談したりしてくれないけれど。きっと彼女には何でも打ち明けて、いろんなことを相談してたんだろうなあ・・・。
陛下の空っぽの手の中に、夕鈴は自分の手を乗せて、きゅっとつかんだ。
そして涙をこらえながら力説した。
「陛下!彩花さんだって、それほど陛下に必要とされて、きっと嬉しかったと思います。幸せだったはずです!」
陛下はそこで初めて顔を上げた。
「・・・ありがとう、夕鈴」陛下はかすかにほほ笑んだ。
その寂しげな微笑が、何か思いついたようにぱっと明るくなる。
「そうだ、彩花はもういないけれど、子どもを遺してくれたんだ。英駿っていうんだけど。英駿だったら会わせてあげられるよ」
って、陛下の隠し子!?いや、一夫多妻制だから隠し子っていうのは違うか。
突然の提案に、夕鈴は戸惑ったが。
母を亡くした、いたいけな幼子の姿が浮かんでしまって。
考える間もなく、「会います!」と宣言していた。



夕鈴は陛下に庭へ連れ出された。どうやら庭で会う手はずらしい。
(いよいよご対面ね・・・。陛下に子どもがいるなんて全然聞いてなかったけど。刺客対策で極秘にされてるのかしら)
そう思うと胸が痛んだ。小さな子がそんな環境で育てられるなんて。
「あの、英駿くんって、どんな子ですか?」
「彩花に似て、優しくて賢い子だよ」にこにこしながら答える陛下。
(お母さん似なのね。賢いのは陛下似かも。お外で遊ぶのが好きな子なのかな。お庭で一緒に遊んだりできたらいいな・・・)
どきどきしながらいろいろ考える夕鈴。気分はすでに一児の母である。
幼い我が子を置いて逝くなんて、彩花さんはどんなに心残りだっただろう。
夕鈴は空を見上げた。
(どうか見守っていてくださいね。貴女には遠く及ばなくても、たくさん英駿くんをかわいがって、できる限り力になりますから!)
ぐっとこぶしを握りしめ、青空に浮かぶ雲の向こうに誓う夕鈴であった。

そこへ、使用人が馬を引いて現れた。
(この馬に乗って会いに行くのかしら?)
陛下はすたすたと馬の方へ歩いていった。そして愛しそうに馬の顔をなでる。
「今日も元気だな、英駿。--妃よ。これが英駿。彩花の子だ」
「え」
紹介されたのは、どこからどう見ても馬である。
まさか人間の両親から馬が生まれるわけはない。
ということは。
(ええーーーーっ!?彩花さんって・・・人じゃなくて、馬だったの!?)
夕鈴はぐるぐると目が回るかと思った。

「妃よ。近くに寄っても大丈夫だ。英駿はおとなしい性質だから」
「はあ・・・」夕鈴はふらふらと歩いていった。
馬の相手をしている陛下は、狼陛下のままなのに、どことなく雰囲気がやわらかい。
きっと彩花にもこんなふうだったんだろうな、と想像できた。
(陛下の愛馬だったのね・・・だから戦場に・・・そういえば陛下は友とか言ってたし!)
馬は、長いまつげの下から不思議そうに夕鈴のほうを見ていた。
優しそうな、賢そうな黒目と目が合う。
下町で見かける荷物引きの馬とは明らかに違う。英駿は美しかった。体の均整が取れていて、毛並みも艶々と輝いている。
たてがみも綺麗で、夕鈴は最初遺髪と思った毛の束を思い出した。
(・・・ホントだ、綺麗・・・)
見とれていると、ハイ、と陛下に声をかけられた。
振り向くと、差し出されたのは、かわいらしい砂糖菓子。
「これは・・・?」
「英駿もそれ好きだから。夕鈴からあげてみて」と陛下に小声で促される。
夕鈴は受け取って、馬の口元に差し出してみた。
手のひらをぺろりと舐められる。
「きゃっ」
夕鈴はびっくりしたが、英駿はご機嫌だった。
「ふうん。懐かれたみたいだね、夕鈴」
「そうですか?わー、可愛いですねえ」
先ほどまでの気負いはどこかに消え、夕鈴はほんわりとした気分になっていた。
英駿もそれを察したのか、さらに心を許したふうに夕鈴に擦り寄ってくる。
「あれ?まだお菓子を食べたいんですかね」
「僕も持ってるんだけどな。夕鈴に食べさせて欲しいみたいだね。・・・英駿、お前も男だなあ」
なんだか面白くないふうに言う陛下がおかしくて。
すっかり勘違いをしていた自分がおかしくて。
夕鈴は声を上げて笑いたくなったが、お妃スマイルでごまかした。
「まあ、陛下ったら」



おしまい☆



動物に優しいのは少女まんがのヒーローのお約束ですよね☆
馬は角砂糖が好きらしいのですが、白陽国に角砂糖はないだろうと思い砂糖菓子にしました。
彩花の名前は、三国志に五花馬っていたなと思って、そこから思いつきました。もし彩花さんがいらっしゃったらごめんなさい。英駿は駿馬と俊英の組み合わせ。

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NoTitle 

気分は、母親の夕鈴さんが、可愛かったです。
そして、深見さまもおめでとうございます。
体をいとしんで、元気な赤ちゃんを産んでくださいね。
たまには、こちらにも顔を出してくださいね。

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>羽梨様 Re: よろしくお願いします! 

>羽梨様
コメントありがとうございます。
私は自己都合で当分活動休止ですが、羽梨様はぜひがんばってください♪
ご活躍をお祈りします☆

>りえくま様 Re: NoTitle 

コメント欄の方に気付くのが遅れてしまって大変申し訳ありません!
コメントありがとうございました!
もし陛下に子どもがいても、夕鈴だったらこんな感じかな~とと思って書きました。かわいいとおっしゃっていただけてうれしいです♪
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