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 ←慎様の萌えイラスト・深見の妄想添え「寄り添う」 →【感想】第36話(ネタバレ)
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短編

兎の針仕事 

 ←慎様の萌えイラスト・深見の妄想添え「寄り添う」 →【感想】第36話(ネタバレ)
まだ演技夫婦。たぶん。
ほのぼの。



その日、陛下はいつもより早く後宮へ帰ってきた。
妃の部屋へ向かうと、彼女は長椅子に座って何か手仕事をしていた。
彼の訪れに気付いた夕鈴は、長椅子から立ち上がった。
「陛下。お帰りなさいませ」 と笑顔とともに出迎えられる。
「我が妃の顔が見たくて、早く戻ってきてしまった」
「今、針仕事をしていて・・・危ないから、すぐ片付けますね」
「よい。そのまま」
人払いをしてふたりになってから。
「今、片付けますから・・・」と夕鈴が言うのを、小犬陛下はにこ、と笑ってさえぎった。
「僕のことはいいから。気にしないで続けて?僕、夕鈴がお裁縫するとこ、見たいな」
「見てても別に楽しいものじゃありませんよ?」
「いいからいいから」
言い負かされて、彼女は長椅子に置いた手仕事を取り上げた。
彼は夕鈴の邪魔にならないよう距離を空けて、長椅子に腰を下ろした。
「夕鈴が針仕事なんて珍しいね」
「私、刺繍とかは苦手なんですけれど、こういうのは好きなんです」
夕鈴は会話を続けながら、手を動かしている。
小さな手が器用に動いて、一定のリズムを刻みながら、あっというまに縫い進んでいく。
無駄のない動きが美しかった。
彼は、女性の無心に働く姿というものをほとんど見たことがなかったので、それはとても新鮮に映った。
(こういうのも悪くないなあ・・・)
ふだん、こんなふうにじっくり見ていたら、すぐに逃げられてしまうだろう。
「お家でも、よくこういうことしてたの?」
「はい。繕い物とか、服を仕立てたりとか」
「へえ、すごいね。夕鈴そんなことまでできるんだ」
「そんな、別にすごくないですよ」
たわいない会話をしながら、彼はおだやかな幸せを感じていた。

しばらくして、彼女は縫い物を口元へ運んで、糸をぷつんと切った。
白い歯が、ちらっと見えて。
切られた糸の端が、唇の紅に染まっている・・・。
あ。
まずい、狼スイッチ入りそう。
落ち着け、落ち着け。
相手は針を手にしてるじゃないか。針だよ、針。
自分の中で、狼が--美味しそうな匂いをかぎつけて、立ち上がった狼が--しぶしぶといったように座り直すのを感じた。
そう、それでいい。
今はもう少し、このやわらかい雰囲気を味わっていたいから。
「できました!」
「へー、見せて見せて」
夕鈴が見せてくれたのは、手のひらより少し大きいぐらいの、巾着袋だった。
「これ・・・どこかで見たような気がするな」
「元は、陛下の服でしたから」
「僕の服?」
はい、と夕鈴は笑顔になった。
「使えなくなったから処分するというのを、女官からもらったんです。一部分がちょっと汚れてるだけで、まだまだ使えるなあと思って。生地自体はとても上質のものですし、もったいないじゃないですか」
「そっか。なんだか楽しそうだね、夕鈴」
「私、こういうの大好きなんです!無駄なく使いきっているという充実感が感じられて、いいんですよね」
夕鈴は楽しそうに、目をきらきらと輝かせながら語った。
陛下は自然と頬が緩むのを感じた。
「いいなあ。今度僕にも作ってもらおうかな」
「あの、実はそれ・・・陛下の分なんです」
「僕の?」彼は少し驚いた。
「私のは、陛下の分を作る前に試しに作ったのがありますから」
「じゃあこれは僕がもらっていいの?」
「はい。でも、陛下にこんな、リサイクル品って・・・よく考えたら失礼ですよね」夕鈴の声にとまどいが混じる。
「そんなことないよ!夕鈴が作ってくれたんだもん」
彼は満面の笑みを浮かべて巾着袋をかざした。
夕鈴はぽっと赤くなった。
「本当に、無理して使わなくていいんです。これは、私が作りたくて作っただけですから」
懸命に言い募る夕鈴もかわいくて。
ちょっと突付きたくなっちゃうなあ・・・と悪戯心を刺激される。
「僕のために作ってくれたんじゃないの?」と彼は首をかしげ、夕鈴の顔をのぞきこんだ。
顔を近づけると、夕鈴の大きな瞳がうっすらと潤んでいるのがわかった。
「あの、なんていうか・・・陛下とおそろいのものが欲しいなー、なんて思って・・・私が、勝手に作った、だけです、から・・・」
夕鈴は彼の無遠慮な視線から逃げるようなしぐさをしながら、しどろもどろに答えた。
「本当に渡すかどうかとか考えてなくて、作ってるだけで楽しいというか・・・だから、持っていてくれれば、それで・・・いえ、もらってくれるだけで、もう十分です」
顔を真っ赤にして。
目を潤ませて。
顔をのぞきこんだだけで、逃げ出してしまう僕のお嫁さん。
・・・駄目だ。
かわいすぎるよ、夕鈴。
彼は自らの腕の中に、愛しい花嫁を閉じ込めた。

え?と思う間もなく、夕鈴は陛下に抱き寄せられていた。
「そっ、そんなに気に入っていただけましたか?」
「ああ--とても。この上なく、気に入った」
その声音は、狼陛下のものだった。
艶やかな声でささやかれ、夕鈴は体から力が抜けそうになった。
「わ、わかりました、わかりましたから放してくださいっ」
「褒美に、君の望みをかなえてやろう。何なりと」
「だったら、放してください、今すぐ!」
「それはできない」
「何なりと、って言ったじゃないですかー!」夕鈴は声を張り上げた。
「言ったか?」しれっとした口調で狼陛下が問う。
「言いましたっ。王様が嘘をつくなんて、よくないと思います!」
「--今の私は君に恋焦がれるだけの、ただの哀れな男だ」
その声には、妙に真剣な響きがあった。
夕鈴は思わず顔を上げてしまった。
「夕鈴・・・」 
艶やかな紅い瞳が、彼女をじっと見つめていた。
端正な顔が、近づいてくる--
「陛下っ、私、欲しい物ありました!」
「--何だ」
すんでのところで、接近が止まった。
「陛下の服で使わなくなったのがあったら、また私にください!」
狼は、鼻先を何か見えない力にはたかれたように、不思議そうな顔をした。
少し間が空いて。
ぷっ、と彼は吹き出した。
「ど、どんだけリサイクル好きなの夕鈴・・・」
夕鈴のお願いごとは陛下のツボにはまったらしく、彼はぷるぷる震えていたかと思うと、お腹を抱えて笑い出した。



執務室で、いつもと何か違うことに気付いた李順。
「陛下。玉璽(国王のはんこ)は、いかがなさいました?」
「あ、ここにあるよ」
陛下は布の包みを持ち上げた。
それは陛下の服の色と同じで、保護色になっててわからなかった。
「そんな袋に?いつもの小箱はどうしたんですか」
これまで玉璽を納めていた小箱といえば、宝石をちりばめ、当代随一の名工の手による見事な彫金--まさに王の手元に置くにふさわしい逸品だった。
「僕はこっちのほうがいいんだ」
「そのようにおっしゃられましても、国王にふさわしい格というものがございます」
「えー?これがなかったら、もうはんこ使うのやだなー」
李順は顔色を変えた。
国王の印がなければ、仕事が止まってしまう。
「・・・仕方ないですね。まあ、一番大切なのは陛下のやる気ですから」



~終~



国王のはんこは大きいそうなんですが、これはきっと簡易判ということで。


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>M様 

コメントありがとうございます!陛下は体が大きいから布地もたっぷりあると思うので、クッションカバーとか枕カバーとかいろいろ作っちゃうといいよ!で、玉座に敷いたりとかするんだろうな、陛下☆夕鈴の枕カバーにしたらなんか陛下が喜びそう(笑)
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