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兎女王シリーズ(by深見)

美しい罠 おまけ

 ←美しい罠 3 →元気よすぎる舞姫の話
白陽国の王宮の夜。
その日は、黄土国の使節を迎えて宴が催されていた。
気候が良いということで、庭に灯りをともして花見の宴になった。
宮中警護の長である黎翔は、警護の任務を口実に、夕鈴のそばに張り付いていたかったのだが。
使節の方が怖がって宴の雰囲気が壊れますから、と李順に反対されて。
結局、家臣の列に彼の席が設けられることになった。
その夜の女王は--
豪華な衣装に身を包み、王宮の主であるにもかかわらず、はかなげに見えた。昼は美しく咲いている花の精が、夜の灯りの下、人の姿を借りて現れたようにも見えた。
女王の傍らに珀将軍が見えないので、皆はいつもより無遠慮に女王を眺めているようだった。
まったく面白くない、と黎翔は杯を重ねた。
彼の周囲には酌をする女官が我先にと押しかけるようにはべっている。
「珀将軍がこちらの席にいらっしゃるなんて、珍しいですわね。いつもは陛下のおそばにいらっしゃるのに」
「将軍は宴のときもいつもお仕事ですもの。たまには宴を楽しんでも、ばちは当たりませんわ。・・・ね?」
「そうですとも。将軍はいつも難しいお立場で、窮屈な思いをなさっておいでなのですもの。時には羽を伸ばすことも必要でしょう」
要は、女王の夫が浮気したっていいじゃない、と誘っているのだ。
「確かに、窮屈だな」
そう言って彼が微笑むと、誘いをかけた女官の目が光った。
しかし彼はそこで周りを見回した。
「こんなに取り囲まれていては、まるで私のほうが警護されているようだ」
「まあ、将軍ったら」一座がわっと沸いた。
「警護される側というのもなかなか窮屈なものだな。陛下がご不満に思うのも無理はないと今日わかったよ。私としてはいくらお護りしても足りないぐらいなのだが」
黎翔が女王の話を出すと、誘いをかけた女官たちは鼻白んだ顔をした。
だが、女王と将軍の純愛ストーリー大好き女官たちはうっとりとした顔になった。
「将軍は本当に陛下のことだけをお考えですのね・・・」
「陛下の関心が他の殿方に向かわないのも無理はありませんわ!」
すると、黄色い歓声の中に、低い笑い声が混じった。黎翔のものではない。
それは隣の席の氾大臣のものだった。
「珀将軍。王宮中の美女を独り占めとは、いけませんね」
彼はいつもの、本心を決して見せない微笑みを浮かべていた。

黎翔はこの機をとらえて、話を切り出した。
「今日、王宮の庭で陛下が御自ら、黄土国の使節を案内している場面に遭遇しましたが」
「ええ、陛下が非公式に彼と話をしたいと仰せでしたので、そのように取り計らいました」
彼は非公式というあたりを若干強調して言った。
喰えない狸だ、と黎翔は思う。
あの男に下心のあることぐらい、大臣だってわかっていただろうに。
もし女王の身に何かあったら、宮中警護の長である黎翔が責任を問われることになる。
もっとも黎翔にしてみれば、責任うんぬんより生理的に許しがたいことだったが。
「あまり軽々しいまねをされては、陛下の威厳に関わります。陛下はまだお若い。時には意見を申し上げることも必要でしょう」
二人の視線がぶつかったが、それは一瞬のことだった。
大臣はすぐに視線を和らげた。
そして、庭木の花を愛でるように顔を上げ、ひとりごとのようにつぶやいた。
「--例の隣国とのいざこざの折・・・陛下の采配ぶりは、お見事でしたね。私の面子をつぶすことなく私の管轄から取り上げて、将軍に託された。早すぎもせず遅すぎもしなかった。後から思うとあれ以上の機はなかったと思えるほどです」
彼はそこで向き直って、いとも真面目な口調になった。
「将軍は、どう思われますか」
「・・・大臣のおっしゃる通りでしょう」
そう答えるしかなかった。
黎翔も気付いてはいた。
夕鈴は周囲がカバーできる程度の隙やうっかりミスなら山ほどこしらえるが、物事の大きな流れを読むことにかけては、不思議と判断をあやまたない。バランス感覚が優れているというか、常識の働きが非凡というか。
大臣は、我が意を得たりとばかりに微笑んだ。
「私ごとき者にどうして陛下の御叡意を妨げることができましょう。私はただ、白陽国を支える氾家の当主として、白陽国の女王である陛下に忠誠を尽くすのみです。--おわかりいただけますか。珀黎翔殿」
--我々はお前のごとき没落貴族とは違うのだ、と言外に言われたような気がした。
黎翔も微笑を絶やさずに受けて立った。
「なるほど。さすが氾家の方は違いますな。水月殿のご忠勤ぶりもお父上ゆずりなのでしょうね。陛下もたいそう目をかけていらっしゃるようですよ」
--といっても純粋に仕事の能力を高く買っているだけで、男妃にしようなどとはまったく考えておられないようですが。
水月が男妃の座を狙っていることも、氾大臣がその後押しをしていることも、黎翔はよく知っていた。そして当の女王にその気がまったくないことも。
一見ほめているように聞こえるが、女王の寵愛を独占している黎翔の口から出れば、それは単なる嫌味でしかない。
フ・・・、と大臣の口の端がゆがんだ。
二人とも、表面はなごやかだった。
しかし二人の間には誰も入り込めない空気が流れていた。
白陽国の一大勢力である氾家の当主と、軍を掌握している女王の夫--二人が本当に衝突したら、白陽国もただではすまない。
それは互いに承知の上だ。
だから激突は注意深く避けている。それでも、というかそれゆえに、小競り合いは日常茶飯事だった。
そのとき、一触即発の空気を吹っ飛ばすものがあった。
「珍しいわね、貴方たちが一緒なんて」女王の弾んだ声。
「陛下・・・」二人の男は剣呑な空気をすばやく引っ込めた。
「お話の邪魔をしてごめんなさい。二人とも楽しそうだったから・・・」
そう言って夕鈴はうれしそうに笑う。彼女の寵愛をめぐって裏で熾烈な争いが行われているとは、夢にも思わないような笑顔で。
「邪魔などと、とんでもない」大臣は若い二人に視線をやり、年長者らしく鷹揚な態度をとった。「邪魔者は私のほうですね。退散することに致しましょう」と彼はそつなく退いた。

夕鈴はほっとした。ようやく黎翔と一緒になれたのがうれしかった。
宴の間中、傍らに黎翔がいないものだから、なんだか心もとなくて。
黎翔を呼ぶのも、李順に反対されて。
黎翔のもとへ行きたかったけれど、女王がみだりに席を外しては、宴の雰囲気が壊れてしまう。
それで、宴が盛り上がってくるまでじっと待っていたのだった。黎翔に酌をする美人の女官たちにやきもきしながら。
途中、黎翔と氾大臣が話し始めたら、女官たちがさーっといなくなってしまったけれど・・・。人払いをして、秘密の話でもしていたのかしら。遠目にはなごやかに談笑しているように見えたけど・・・。
「ふたりで何の話をしていたの?」
「君のことを」
「え・・・」
夕鈴の頭に浮かんだのは、暇なときに黎翔を想ってぼーっとしていたことだった。
会見の折も、大臣の適切なサポートがなければ醜態をさらすところだったのだ。
そんなことが黎翔にばれたら、またからかわれる!
かああっと赤くなってしまう夕鈴。
「あの・・・氾大臣は、なんて?」
「・・・彼が君のことを何と言っていたのか、気になるのか」
「気になるわよ、もちろん!・・・何て言ってたの?」
やっぱり大臣に口止めしておけばよかったかしら、でもそれもかえって恥ずかしいし。
それに氾大臣なら、そういうことを言わなくても、わかってくれそうだと思ったんだけどな・・・。
夕鈴はおずおずと黎翔の様子を伺った。
黎翔はにっと笑った。一瞬ぞくっとするような微笑みだったが、その口調はあくまで丁寧だった。
「ここでは申し上げられません。場所をおあらためくださいますよう」
「え?ええ・・・」
黎翔の気迫にのまれて、あいまいにうなずいたら、手際よく人気のない一角に案内された。黎翔は警護の責任者だけあって、こういう死角も把握しているらしい。
幾重もの几帳に隔てられ、人の姿は見えない。けれども、宴席のにぎわいが夜風に乗って届く。
大きな声を出さない限り、話を聞かれることはなさそうだ。
やっぱり秘密の話なのかしら、と夕鈴は少し緊張した。
が。
「夕鈴。君が私以外の男のことを考えて、頬を染めるなんて・・・許せないな」
「え?」
夕鈴はあっという間に黎翔の腕の中に捕らわれた。



黎翔の腕の中で、獲物がもがく。
「黎翔、宴に戻らなきゃ・・・」
「宴席で、君は私のものだと皆に知らしめるのと--これから寝所で私のものになるのと、どちらがいい?」
黎翔は夕鈴のきっちりと詰まっている襟元をなぞり、指を割り込ませた。指先に触れる素肌はあたたかく、やわらかかった。
「後で・・・ね、黎翔、お願い」
「今、選べ」彼は冷たく突き放した。
「そんな・・・」
「選べないのか。ならば今、ここで君を抱いて・・・皆に君の声を聞かせてやろうか・・・?」
「・・・!」
大きな瞳におびえた表情が浮かんだ。
彼は半ば強引に紅い唇を奪いに行った。
彼の腕の中で、強張っていた華奢な体が、やがてあきらめたように弛緩していくのが感じられた。
首すじに口付けると、夕鈴はなまめかしい吐息とともに身をよじらせた。
「ん・・・黎翔、だめ・・・」
「夕鈴・・・」彼は熱を込めてささやいた。閨の中では、名前を呼ぶだけで夕鈴は愛らしく反応する。それがかすかなささやきであっても。
「や、ぁ・・・私、女王の顔、できなくなっちゃう・・・」
「それでいい。君は私の可愛い夕鈴だ」
「今は、だめっ・・・黎翔、お願い・・・」
夕鈴は必死に懇願してきた。
今にも泣きそうな顔をして、ぎゅっと彼の袖にしがみついてくる様子は、さらいたくなるほど可愛かった。
--夕鈴の女王の仮面を剥がしてやるのは、いつだって楽しい。
女王という立場を忘れ、ただ彼に愛されるだけの存在になるまで、少々手間がかかるが--その間の彼女の抵抗もかわいらしいものだ。
だが、やりすぎは禁物だ。
ここで無理強いすると本気で怒られておあずけを食らわされるな、と黎翔は過去の経験から冷静に割り出した。
彼だってもちろん、夕鈴の仕事に穴の開かない程度をちゃんと心得ているつもりなのだが。夕鈴が自らに課すレベルはもっと高いらしい。
夕鈴は仕事熱心だからなあ・・・。
ふう、とため息をついて意識を切り替える。
「・・・じゃあ、今我慢する代わりに、後でちゃんとごほうびくれる?」彼女が弱いのを承知で、小犬の口ぶりでねだる。
「う・・・わかりました」夕鈴は顔を赤くしたまま、目を泳がせて答えた。
おおかた「ごほうび」の内容を想像してしまったのだろう。
彼女の頭の中を一瞬でも占領したことで、黎翔はとりあえず満足することにした。
「楽しみにしてるよ、夕鈴」
耳元でささやいて、ちゅっと音だけでキスをした。
「~~~~っ」夕鈴は耳元をかばうように手を当てた。
「お戻りになりますか、陛下」
頭の中では女王の衣服を脱がせていることなど微塵も感じさせない涼やかな微笑を浮かべて、彼はうながした。


~終~


すみません。私が書く黎翔はドSに徹し切れなくて途中でデレてしまうなあ。

☆おまけ 夕鈴←史晴
史晴がひとりでうだうだしているだけ(^^;)それでもいいよという方のみ、どうぞ。













氾大臣は、自邸に戻ってから飲み直していた。
--いつからだろう、こんな思いを抱くようになったのは・・・。
彼は自分の中の相反する気持ちをもてあましていた。
氾家の当主として考えれば、女王は傀儡にできるような凡庸な、自分の頭でものを考えられない人間であることが望ましい。
ところが。
一個人としての彼は、彼女を名君に育て上げ、名伯楽の名を欲しいままにする己の姿を思い描くようになっていた。
史晴は手にした盃に視線を落とした。
--それだけだ。
私は歴史に名を残したいという、男なら誰でも一度は抱く夢に魅せられているだけだ。
あの、彼女の助けを求めるようなまなざしを、己の身に浴びていたいと感じるのは--そういうことで、それ以上の意味などないのだ。
史晴は酒の水面に浮かぶ自分の影ごと呑み込むように、盃を干した。余計なことを考えずに済むように、さっさと頭を麻痺させてしまいたかった。
しかし意識は冴えわたる一方で、女王の表情だのちょっとしたしぐさだのをぽつんぽつんと思い出してしまう。
酒というのはやっかいなものだと思う。
酔いたいときには酔えないのだから。

おしまい☆
誰だよこれ、って感じの史晴になってしまいました。彼はこんな情に流されるタイプでは絶対ないと思うが。

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