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短編

君がいる世界

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◆注意!へたれ陛下注意報です。
『君にまどろむ』みたいな感じ。
夕鈴はまだ臨時花嫁です。

◇ ◇

白陽国は名君の統治によってこの世の春を謳歌していた。庶民にいたるまで国民皆が平和と豊かさを享受していた。
王は近隣諸国から妃を迎え、各国と良好な関係を保っていた。妃たちは白陽国になにがしかの利益をもたらしてくれた。それは鉱山の権利であったり、水利権であったり、交易ルートであったりした。おかげで権利をめぐる小競り合いが避けられ、無用な争いはなくなった。
王は妃たちを平等に寵愛した。世継ぎにも恵まれ、妃たちも姉妹のように仲良く交流しているようだ。
何一つ欠けるもののない世界だと、誰もが思っていた。ただ一人、この国の王--珀黎翔をのぞいては。

彼はあるときから同じ夢を見るようになった。
いつも同じ乙女が現れる。その乙女には見覚えがあった。声が正妃に似ているし、目もとや口もと、後姿や笑ったときの雰囲気などが、妃の誰かしらに似ているのだ。まるで、妃たちからいろいろなパーツを集めて作られた像のように。
そして、彼女と一緒にいるときの自分は--その世界の自分は、とてもリラックスしていて、心からのくつろぎに浸っている。同時に、毎日が新鮮で、きらきらと輝くような彩りで満ちていた。
夢の世界の自分は縁談にひどく慎重で、そのため臨時花嫁などという不可思議なものを設けたらしい。夢の世界では彼女が唯一の妃ということになっている。妃がひとりで、しかも手を出していないなど、そんなことがあるものかと思うが夢だから仕方ない。
そんな状況にも関わらず、夢の世界の自分はとても楽しそうだ。見ているこちらがうらやましくなるほどに。
--うらやましい?私が?この世のすべてを手にしたと謳われるこの私が?
寝起きの王はいぶかしげに首をかしげた。だが、すぐに忘れ、日常の業務に忙殺された。



老師が保養先の離宮から帰ってきた。久しぶりに会った老師はぎっくり腰が治ったせいか、生き生きとしていた。
「いやあ、離宮も良いですが、やはり後宮が一番ですわい!わしが目を光らせていないと、またあの若造メガネが勝手なことをしでかさないとも限りませんからのう」
「李順がか?」
「そうです。昔、陛下がまだお妃をお持ちでなかったころ、あまたの縁談に悩まされていたころの話ですが。あの若造、縁談よけのために臨時でふりだけの妃を雇おうなどとたくらんでおったらしいのですわ」
どき、と秘密を暴かれたように王は動揺した。
「ほう・・・そのようなことがあったのか」王は内心の動揺を隠しながら話を促した。
「ま、仮にその話が進んだところで、適任者が見つからなかったでしょうな。妃といっても通る人品で、分をわきまえ、秘密を守れるほど口の堅い女性など・・・若い娘ならなおさらですわい。まったく、あの若造は女というものがまるでわかっとらん」
「そうだな。確かに」王は苦笑した。
後宮管理人の批判は、いかにも的を得ているように感じられた--李順に対してだけでなく。

もしかしたら、この世界のどこかにあの乙女は実在するのではないだろうかと考えたことがある。夢の印象があまりに鮮やかなものだから。
しかし彼は自嘲とともにその考えを振り払った。
富も栄誉も欲せず、見返りを求めず、ただひたすらに無償の愛情を注いでくれるなど、そんな都合のよい人間が存在するわけがない。
あの乙女はやはり夢でしかないのだ。彼はその現実をほろ苦い思いで飲み下した。



政務が忙しいときは、後宮に戻らず王宮で寝泊りするのが習慣になっていた。さして苦とも思わなかった。忙しいときや何かに迷っているときほど、あの夢を見ることが多い。
彼はいつしか夢の中で彼女に出会えるのを待ち焦がれるようになっていた。
今日はあの夢を見られるだろうか。彼女に会えるだろうか。
暗がりの中、王は決して手に入らない幻の乙女の名をひそやかに呼んだ。
あらゆる栄光に包まれ、この世のすべてを手にしたと謳われる彼の、たったひとつ、望んでも得られぬもの。
「夕鈴・・・」

◇ ◇

「夕鈴・・・」
陛下が私を呼んでいる。その口調がいつもの甘いものではなく、何か差し迫ったような、ただならぬ気配であるのを感じ取って、夕鈴は目をこじ開けた。
灯りがあるだけで、あたりは暗い。まだ夜だ。
「陛下、どうかなさいました?」
「よかった・・・!」彼は大きな安堵のため息とともに、がばっとのしかかってきた。
「へ、陛下!?」
夜更けに眠っているところへ突然、陛下が現れて。抱きつかれて。夜這い同様の状況に夕鈴はパニックになりかけたが、それはほんの一瞬のことだった。陛下の体がわなわなと震えているのに気付いたからだ。
「あの、陛下・・・寒いですから、とりあえず、お布団の中に」
うん、と何のけれんもなく、彼はするっと布団の中に入ってきた。夕鈴はふと、小さいころ、お母さんがいないと言って泣く青慎に添い寝したことがあったのを思い出した。
「ごめんね、こんな時間に。怖い夢を見ただけなんだけど・・・」
「いえ、それは構いませんが。大丈夫ですか?」
「・・・夕鈴、ちょっといい?」
どうぞ、と言う暇もなく、抱きしめられた。布団越しでなく抱きしめられると、さすがにどきんとした。
けれど--
彼のたくましい腕からは、迷子の子どもが親を見つけてしがみつくような必死さが感じられて。
顔や肩、背中を触られたが、いやらしく撫で回すのでなく、がしがしと何か確かめるような手つきだった。頭や額には、キスするのでなく、鼻先で探られているようだった。
・・・なんだか、犬が仲間の匂いを確かめているみたい・・・と思ったら、気が抜けてしまった。
「陛下。もう大丈夫ですよ」
陛下の体は夕鈴よりずっと大きい。その広い背中を、夕鈴は子どもをあやすような気持ちでとんとんとやさしく叩いた。
しばらくして、ようやく陛下は夕鈴を離してくれた。
「もう少しここにいていい?何もしないから」
「ええ・・・」
怖い夢って、どんな夢かしら。狼陛下の怖い夢・・・内乱とか、陛下を恨んでいる人が化けて出たとか、そんなのかしら。うう、怖すぎて聞けない・・・。
「陛下・・・すみません、うっかり怖いこと考えちゃって・・・私も怖くなってきちゃいました」
「ごめんね、僕のせいだ」
陛下はすぐに、手を繋いでくれた。大きな手に包まれて、夕鈴はほっとした。



彼は夕鈴のかたわらで仰向けになった。
--本当に怖い夢だった。君がいない世界の夢・・・
夢なのに妙にリアルだったせいかもしれない。目が覚めてからも、これは夢の続きなのかと疑念に襲われて、思わず夕鈴がいるのを確かめずにいられなかったぐらいだ。
夕鈴の姿を見て、声を聞いて、ぬくもりを、匂いを、すべて確かめて、ようやく人心地がついた。
夢の世界は、夕鈴がいない以外は特におかしなところはなかった。李順や老師もいて。僕は・・・普通に王様やってた。楽でもあった。王として型どおりに振舞っていればよかったのだから。
だが、何も感じなかった--無彩色で無機質の世界。一歩間違ったら、というより、ああなる可能性のほうがはるかに高かったのだろう。
彼は横たわったまま、顔を夕鈴のほうへ向けた。
「夕鈴、こっち向いて?」
夕鈴もこちらを向いた。彼はじっと見つめた。彼にとって奇跡に等しい存在を、目に焼き付けようとするかのように。
「・・・あの、何か顔についてます?」
「ううん。・・・李順が臨時花嫁を雇おうなんて言い出したとき、何を言い出すのかと思ったけど・・・」
彼は夕鈴の顔にかかる髪をそっとかきあげた。
「・・・君が来てくれてよかったなあ、と思って」心の底からそう思った。
夕鈴の髪を撫でていると、心が落ち着いて、満たされていくのがわかる。気が付くと頬が自然に緩んでいた。
夕鈴ははにかむように、かすかにほほ笑んだ。
「陛下。まだ早いですから、もう少しお休みになったらいかがですか」
彼は夕鈴の髪で遊びながら答えた。
「・・・眠るのが怖い。またあの夢を見てしまいそうで・・・」
「そうしたら、私も眠って、陛下と同じ夢を見ます。陛下の夢の中に私も出ますから。夢の中だったら、私だって陛下をお守りできますよ。だから--」
大丈夫です、と夕鈴はにっこり笑った。まばゆく輝くような笑顔だった。
「それは頼もしいな・・・」
手を伸ばして、触れたくなった。彼の乙女に。だが、それをしなかったのは、そんなことをしたら逃げられてしまいそうだからなのか、それとも彼女がまぶしすぎて、己の手で触れるのはためらわれたからなのか--
どちらなのかわからないまま、彼は心地よい安らぎに包まれて、すうっと眠りに引き込まれた。

~終~



陛下はスイッチ次第で攻めモードだったりまったりモードだったり、寝所でもオンオフの差が結構あるんじゃないか?なんて妄想する今日この頃。
夕鈴が臨時花嫁に選ばれたのは、①本物の妃になりたいなど妙な野望を抱かない無欲さ、②秘密を守れる口の堅さ、が決め手だろうと思います。夕鈴は命の危険にさらされても秘密は守る根性があるし、17歳とは思えない地に足の着いた堅実さがあるし、まさに適任だと思います。いったいどういう選考が行われたんだろう。



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