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 ←【一言】第30話ちょい足し妄想(ネタばれ注意!) →いただきもの 慎様よりイラスト 見つめあう二人
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短編

灯りに願いを

 ←【一言】第30話ちょい足し妄想(ネタばれ注意!) →いただきもの 慎様よりイラスト 見つめあう二人
新年ネタです。夕鈴はまだ臨時花嫁で、恋心を自覚した状態。 

◇ ◇

年の瀬を迎えた後宮はどことなくあわただしい。それは王宮も同じようで、陛下もなかなかゆっくりできない日が続いた。
夜になってから妃の部屋を訪れた陛下にお茶を出しながら、夕鈴はたずねた。
「陛下、お仕事忙しいんですか?」
「うん、まあね。いつものことだけど、年末は何かとね」
夕鈴の淹れた熱いお茶を飲んで、陛下はふにゃ、ととろけきった表情になった。
「夕鈴は今日は何をしていたの?」
「後宮のお掃除をしてました。すがすがしい気持ちで新年を迎えられるように、ぴかぴかに磨きましたよ!」
「そっか。・・・ごめんね、年末年始もお休みあげられなくて。お家帰りたかった?」
「いいえ、いいんです。お仕事ですから」
年末年始も妃の仕事がありますから、とりじゅんから言われたとき、家族に会えなくて残念な気持ちもあったけれど、陛下のそばにいられるといううれしさのほうが勝っていた。でも素直にそうとは言えなくて、仕事熱心な台詞しか出てこない。
陛下はクス、と笑った。
「夕鈴はお家にいたときも、年末は大掃除とかしてたの?」
「はい。年末年始は行事がたくさんあって楽しみなんです。それを心から楽しむためにも、その前にきちんと仕事を済ませないと」
「へえ・・・夕鈴が楽しみにしてる行事って、どんなの?」
「そうですね、いろいろありますけれど・・・やっぱりなんといっても天燈会ですね!」
天燈会とは--
提灯に願い事を書いて、灯りをともし、熱気球のようにして一斉に夜空に放つという行事だ。新年の一連の行事の締めくくりでもある。
「下町では、軒先に提灯を飾ったりして、町中がお祭り気分になって楽しいんですよ」と庶民代表の夕鈴はうきうきと語った。
もともと夕鈴はイベント好きだが、天燈会は特に、夜の闇にきらめく灯りが幻想的で、大好きなイベントのひとつである。
「僕は遠くから、天燈が空に上っていくところを見たことしかないんだよね」と陛下。
「あれは皆で集まって、いっしょに飛ばしたりするんです。そのとき・・・」
カップルで一緒に参加する人たちも多いんですけど、というのはなぜか続けられなかった。陛下のことを好きだと自覚してからというもの、その手の話題に触れることさえできない。意識しすぎだとは思うが、仕方ない。
「ふうん、楽しそうだね。・・・僕も自分で上げてみたいなあ」
「後宮では行わないんですか?」
「えー、やだよー。ここでやると大掛かりな催しにされちゃいそうだし。僕は夕鈴と二人っきりで楽しみたいな」
二人っきり、という言葉が響いて、夕鈴はどきっとした。陛下は夕鈴の動揺に気づかないふうに続けた。
「ねえ、夕鈴。その日だけまたお忍びで下町へ行こうよ」
「でも、李順さんになんて言われるか・・・」
「大丈夫だよ、一日ぐらい」
陛下は満面の笑みを浮かべた。



ところが。
天燈会の日は王宮の新年の宴と重なってしまった。
当日、陛下の傍らで妃として振舞いつつ、夕鈴の心は下町へ飛んでいた。
本当は、陛下と一緒に行くのをとても楽しみにしていて。行けないとわかったとき、がっかりした顔をしないようにするのに精一杯だった。
今もこうして陛下のそばにいられるけれど、お互い演技をしたままだ。この前下町に行ったときはお互い演技なしでいられて、なんだか陛下に近づけたような気がしたのに・・・。
「我が妃よ。どうした?」
「あ・・・」ぼんやりしていた夕鈴は、意識を取り戻した。
「宴の空気に酔ってしまったのか」狼陛下はくい、と夕鈴のあごを上げて、のぞきこんでくる。整った顔立ちに艶やかなほほ笑みを浮かべて。
(うわー、顔が近い!!)
夕鈴は我慢できずに顔を背けてしまった。陛下の手に髪を一房取られたままで。
「私は君に酔ってしまったようだ・・・」夕鈴の表情を皆から覆い隠すように、陛下が重なってくる。
(陛下、演技に気合入りすぎですー!)
夕鈴は目をぎゅっと閉じて耐えた。
ふいに、体がふわっと浮いた。陛下に横抱きにされたのだ。
狼陛下は妃を抱えたまま立ち上がった。
「私はこれより妃と二人で新年を祝う。皆もおのおので新年を祝ってくれ」
怖い怖い狼陛下の堂々とした惚気にどう突っ込むべきなのか一同がとまどっている隙に、王と妃は宴を後にした。

陛下の私室でふたりきりになるや否や、陛下は毛皮を脱ぎ捨て、襟元の留め具を外した。
ぱら、と濃紺の上衣がめくれて、白い衣があらわになる。
「へ、陛下!?」今までにない展開にあわてる夕鈴。
「夕鈴・・・脱ぐの手伝おうか?」陛下はにこっとして冗談か本気かわからない口調で言う。
「いえ、自分でできますから!・・・って、あのっ!?」
「じゃあ、夕鈴の服はそこに置いてあるから。早く着替えて。よかったら奥の部屋使っていいよ」
「え?着替えって・・・」
小犬陛下はにっこりとほほ笑んだ。
「今夜は天燈会でしょ?今からだったらまだ間に合うと思うんだ」
「あ、そうですね!」
すっかりあきらめていた夕鈴はにわかに元気を取り戻した。
そんな夕鈴に、陛下も上機嫌で笑いかけた。
「冬の夜は早いから、急ごう」
「はい!」



二人が下町に着いたころにはあたりは暗くなっていて、提灯が華やかに夜の闇を彩っていた。
大通りには屋台が出ていて、たくさんの人出でにぎわっていた。下町を見慣れているはずの夕鈴でも思わず目を見張るほど、お祭り気分があふれていた。
雰囲気に圧倒されていたら、すっと陛下に手を取られた。
「はぐれちゃうといけないから」陛下はにこっとほほ笑んだ。
「・・・はい」夕鈴はかああっとなりながら、おとなしく従った。
手を握られることなんて、今までにも夫婦演技でたくさんあったはずなのに。まるで初めてのように、胸がどきどきしてしまう。
どきどきする一方で、大きな手にすっぽり包まれていると、とても安心する。心臓にいいのか悪いのかわからない。
二人は人だかりの多い提灯売りの店先に並んだ。
「お姉ちゃん、恋愛運アップならこちらの桃色の提灯はどう?これね、今年の新作!女の子に人気あるんだよ~。兄さんにはこっちの黄色はどう?金運アップ!」
れ、恋愛運って・・・。心が動いたが、まさか陛下の前でそれを買うわけにはいかない。
「えーと・・・普通の白いのでいいです」
「そっかあ、恋愛は成就しちゃったからもういいのかな?奥さん、子宝祈願なら、こっちの・・・」
「いいえ、白いので!」夕鈴はあわてて注文を押し通した。いつも夫婦演技しているのに、奥さん、なんて呼ばれただけでなぜか恥ずかしくなってしまって。
「僕も同じものを」
「いいねえ、二人で天燈上げると願いがかなうからね!筆はそこにありますから、順番にどうぞ」

陛下は片手に畳まれた提灯を持って、片手で置いてあった筆を取った。
「はい、夕鈴。持っててあげるから、先に書いちゃいなよ」
「いえ、私は・・・もうちょっと考えたいので、へ・・・李翔さん、お先にどうぞ」
「そう?じゃ、遠慮なく」
陛下は何の迷いも感じさせず、さらさらっと筆を走らせた。
「はい、夕鈴」と筆を手渡す。
「もう書いちゃったんですか?」
「うん。僕の願い事はひとつしかないからね」
陛下の願い事って何だろう。ひとつしかないっていうと、やっぱり国家安泰とかかしら。私の願い事は・・・どうしよう・・・。
迷った末に、夕鈴もゆっくりと丁寧に提灯に記した。陛下に見られると恥ずかしいので、小さく。
火をもらって、二人は人だかりから少し離れたところに場所を移した。
提灯をふくらませて灯りをともし、後は飛ばすだけである。
「陛下のお願い事って、国家安泰ですか?」
「うーん、それもいいけど、それだと願い事じゃなくて目標になっちゃうからね」
「はあ・・・なるほど」確かに陛下の場合はそうかもしれない、と夕鈴も思った。
「だから願い事は別のことを書いたよ。・・・こればっかりは僕の努力だけじゃどうにもならないというか・・・どうなるか予測できないことをね」
「陛下にもそんなことってあるんですか?」
「・・・あるよ」陛下の口元は笑っていたが、目には寂しそうな色が浮かんでいた。しかしそれは一瞬のことだった。
「夕鈴は何を書いたの?」
「私は・・・陛下のお願い事がかないますように、って」
陛下は目をぱちくりさせた。夕鈴はあわてて付け加えた。
「えーと、考えがまとまらなくて、それで、陛下のお願い事なら、きっと素晴らしいものだろうと思って」
本当は--
願い事はたったひとこと。しかしそれを天燈に記すことはためらわれた。望むことすら許されないようなことだから。ずっと貴方のそばにいたいなんて--
「陛下は何を書いたんですか?」
「僕は--」
そのとき、わあっと歓声があがってふたりの会話をかき消した。皆が一斉に天燈を夜空に放ったのだ。
「夕鈴、一緒に飛ばすよ」
「はい!」
二人は自然に見つめあった。陛下がうなずいたのを合図に、同時に手を離した。
二つの天燈は仲良く空へ上っていった。
夕鈴はつい、陛下の天燈に目を凝らした。見慣れた文字だけが目に飛び込んできた。
”夕鈴”
何かの見間違いかとまばたきした隙に、天燈は遠ざかり、何も読めなくなってしまった。
(今のは何?見間違い?それとも・・・?)
「夕鈴、見て!すごいよ!」陛下の明るい声に引っ張られて、夕鈴の心は夜空にひらかれた。
「わあ・・・!」
冬の晴れた夜空に無数の灯り上っていく様子は、圧巻だった。
夕鈴はしばらく声も出せず、ただ眺めていた。

「綺麗ですね・・・」まばたきもせず眺めていたせいか、涙がちょっと出てしまった。
「夕鈴?」
「なんでもないです、ただ、あんまり綺麗だから・・・それに、私、天燈の後はいつも泣きたいような気持ちになっちゃうんです」
「どうして?」
「お祭りが終わって、これから日常の生活に戻るんだなあと思うと、なんだか寂しいような気持ちになって・・・」
だけど、これまでは本当に泣くようなことはなかった。
暗い夜空に吸い込まれていく天燈を見ていたら、なぜかこのバイトの終わりを意識してしまって。
どんなに楽しくてもお祭りに終わりが来るように、臨時花嫁の契約にもいつかは終わりが来る。そして、日常の生活に--陛下のいない、下町での生活に戻る。
わかっていたことなのに・・・胸が、痛い・・・。
「--こうすれば、寂しくない?」
陛下は自分の外套の中に夕鈴を隠そうとするかのように、厚い布地をかぶせてきた。夕鈴の首から下はすっぽりとくるまれた。
「はい。あったかいです・・・」
陛下はいつだってあたたかくて、やさしくて。
やさしくされるとよけいに涙が出てしまうのはなぜだろう。
夕鈴は陛下に気づかれないように、すん、と鼻をすすった。
陛下に顔を見られなくてよかった、と思った。

臨時花嫁の仕事が終わっても。
陛下に会えなくなっても。
きっと、この夜のことは忘れない。このぬくもりも--

夕鈴は目を閉じて、自分に回された陛下の腕におずおずと手をかけた。



彼は夕鈴を抱きしめながら、小さくなっていく天燈を眺めていた。
これまでは季節の行事や催し物など、くだらないとばかり思っていたのに。
君と一緒だと、なんだか楽しい。
こんなふうに、いくつもの行事を、毎年君と迎えられたら・・・、とつい夢を見てしまう。

僕の願いはただひとつ。
君とずっと一緒にいたい--

二人は天燈が見えなくなるまで、ずっとそうして立っていた。見えなくなってからも、しばらくそのまま立ち尽くしていた。

~終~



旅行パンフをぱらぱらと見ていたら、台湾の新年の行事というのがありまして、そこからアイデアをもらって脚色しました。提灯売りの人がやたら夕鈴を冷やかすのは、中に深見が入ってるせいかもしれない(笑)夕鈴に「奥さん!」とか言ってみたい(どういう萌え?)途中、屋台でなんか買い食いしようかと思ったんですが、陛下が揚げパン食べた後の夕鈴の指をなめ始めて話のトーンが変わっちゃうのでやめました。
なんか陛下って人目を気にせずぽんぽん服脱ぎそうなイメージがあります(幼少のころから周囲に人がいるのでプライバシー意識が薄そう)。しかし陛下の場合、寝所ですら完全にプライバシーが保たれているとは言い難いですよね、きっと。あー、だから浩大を呼び戻したのか?・・・すみません、本編が清らかな分あとがき(?)が(^^;)

では皆様、よいお年を!(^^)

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