スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←◆◆1 可愛い人・おまけ(没ネタ) →【感想】第29話
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 愛の檻シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png リレーss
総もくじ  3kaku_s_L.png +小説以外(感想・考察etc)
もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • [◆◆1 可愛い人・おまけ(没ネタ)]へ
  • [【感想】第29話]へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
 

短編

ある夜の風景

 ←◆◆1 可愛い人・おまけ(没ネタ) →【感想】第29話
いい夫婦の日記念ss。『◆ある朝の風景』の、同じ日の夜のつもりで書きました。
未来設定・本物夫婦です。でも健全。たぶん。

◇ ◇

夕鈴は落ち着いて話ができる夜のひとときを待って、切り出した。
「あの、陛下。お願いがあるんですが」
陛下は夕鈴が淹れた夜用の薄目のお茶をすすっている。
「うん。なんでも言って?」
陛下はにっこりして答えた。その笑顔がまぶしくて、夕鈴は視線を落としてしまった。
「その、なんというか・・・もう少し、間隔をあけていただきたいんですが・・・」
がたっと音がした。
陛下は椅子ごと後ろへずれて、卓から少し間隔をあける形になった。
「これぐらいでいい?」
「いえ、あの、そうじゃなくてですね」
「うん」
「今じゃなくって・・・」
「うん。今じゃなかったら、いつ?」
なんて説明すればいいのか・・・と夕鈴はぐるぐると必死に考え始めた。
「いつ、っていうか・・・特に時間の指定はなく、これからずっと、お願いしたいんですけど・・・」
「えー?・・・夕鈴はそんなに、僕と距離を置きたいの・・・?」
「そっ、そういう意味じゃないです!」
夕鈴はあわてて否定した。

今朝、目が覚めたときに、なぜか腰が動かなくて、体を起こすこともできないほどだった。
もしや何かの病気じゃないかと不安になった夕鈴は、うっかり老師に相談してしまったのである。
真相を知ったときは、卒倒しそうになった。
つまり、昨夜の行為で、体に負荷がかかった結果なのだと指摘されて。
今にも口から泡を吹いて倒れそうな夕鈴に、老師はほっほっと笑いながら追い打ちを掛けてきた。
「しかしお前さんも大変じゃのう。・・・やはり陛下はそんなにお強いのか?」
「そっ、そんなの覚えてないですよ!!」
「ほ~お。あれじゃな、お前さんの意識がぶっ飛んでしまって、記憶がないほど、激しかったということか。そーかそーか」
「・・・!」
「おや?もしかして図星かの」
もともと下町にいたころから、女友達と恋話することさえなかった夕鈴である。後宮管理人の会話は刺激が強すぎて、とてもついていけなかった。
「誰にも言わないでくださいよっ!?」
なんとかそれだけ言って、逃げてきたのだった。

(もう陛下とはあんなこともしちゃったのに、いまさら何を恥ずかしがってるのよっ、夕鈴!)
と夕鈴は自分に活を入れたが、あまり効き目はなかった。
かえって”あんなこと”を思い出してしまって、頭が沸騰しそうになってしまった。
「その、体が・・・ちょっと、しんどくて・・・」
「掃除婦の仕事?確かに真面目にやったら結構いい運動だよね、あれ。夕鈴はもう僕のお嫁さんなんだから、あっちは趣味でいいんだよ?」
「いえ、そちらの仕事ではなく。なんというか・・・妃の仕事というか・・・」
まるで老師のスローガンのようなことを言ってしまって、夕鈴は顔から火が出そうになった。
「夫婦の営み?」あっさりと陛下が口にした。
「そっ、それです!」
「そっか・・・」
陛下はため息をついてしまった。
夕鈴はこれだけはしっかり伝えなくては!と準備していた言葉を、しどろもどろになりながら、つなげた。
「あの・・・いやだって言ってるんじゃないですよ?陛下をきらいとか、怖がってるとかいうんでもなくて、ただちょっと、その、控えめにというか・・・間隔をあけていただければ、と・・・」
「うん。わかってる。今は・・・ほら、新婚さんだし。そのうち落ち着くと思うんだけど。・・・たぶん」彼は若干頬を赤らめながら、ばつが悪そうにつぶやいた。
「たぶん、って・・・」
「ごめん、僕にもわからない。自分でも制御できなくて・・・あー、何言ってるんだ」
彼は口元を隠すように、片手で顔を覆って。目は、あらぬ方向を泳いでいて。その目元が、少し赤かった。
およそ陛下らしくない挙動不審な様子に、夕鈴は目が点になった。

夕鈴と出会う前の陛下は--
房事に関しては、「あー、こんなもんか」と悟ったような気分でいて。
そこに生来の面倒くさがり屋気質と、政務の忙しさが加わって。
臨時花嫁に手を出すなと言われたときも、後宮のごたごたはうんざりだし、独り寝も気楽でいいや、ぐらいの気持ちでいた。
夕鈴と出会ってからは--
夕鈴の存在が大きくなりすぎて、手を出す覚悟がなかなかできなかったというか・・・いちいち新鮮な彼女の反応を見ているのが楽しくなってしまって。
それが、夕鈴と結ばれたら--
愛する女性との行為は、こんなに気持ちのいいものだったのか!と天啓を受けたように開眼してしまったのである。

彼は長いため息をついた。
「正直、自分でもちょっと驚いていて・・・。最近、兄さんのこと、前よりはやさしい気持ちで考えられるようになったぐらいだしね・・・」
「お兄さんって、いつか話してくれた、前の王様のことですか?」
「うん。政務放って酒と女に溺れて。そんなのは愚か者のすることだとずっと軽蔑していた」
一瞬、声に冷たいものが混じった。
しかしその面差しには、どこか面はゆそうな照れがあった。
「でもね。・・・夕鈴といると、ときどきふっと、そういう気持ちもわからないでもないなあ・・・と思うんだ。あ、でも僕は政務放ったりはしないよ?ちゃんとけじめつけてるから、心配しないでね?」
「わかってます、そんな心配してません」
「それに僕は、夕鈴ひとりだけだからね?」
「・・・はい」夕鈴は小さく返事して、小さくうなずいた。
「王様の仕事も、真面目にやると結構大変だしね。まあ覚悟はしていたんだけど、予想以上というか。・・・僕だって、もし夕鈴がいなかったら・・・」
まるでひとごとのように淡々と陛下は語り続けた。
「・・・あるときふっと燃料切れしちゃって、酒と女・・・まあなんでもいいけど、そんなものに溺れるようになってたかもしれないなあ、なんて・・・そんなふうになってしまう可能性は、この僕にも、全くなかったわけじゃない・・・」
彼は遠い目をしていた。ほんの一瞬だったけれど、夕鈴のいない世界をのぞいているような目は、ぞっとするほど冷たかった。
たまらずに、夕鈴は叫んでいた。
「そんなっ、陛下はそんなことないです、絶対にないです!!」
「うん。--僕には、君がいる」
ふっと夕鈴に戻ってきた視線は、いつものようにあたたかかった。
「夕鈴がいてくれるから。僕は、大丈夫だよ」
にこっと笑って言う声は、いつものようにやさしくて。
夕鈴はようやくほっとした。
それでも、さっき見てしまった冷たさが忘れられず、ぼんやりと陛下の顔を眺めてしまった。
彼は決まり悪そうに、ぎこちなくほほえんだ。
「・・・なんだか、変な話しちゃったね」
「いいえ、陛下がそういうお話ししてくれるの、私はうれしい、です・・・」
言い終えるより早く、ぽろぽろっと涙がこぼれ落ちた。
「夕鈴!?」
陛下はがたっと席を立った。
「ごめん、僕、なんかまずいこと言っちゃったかな」
「いいえ。うれしいんです。陛下はお仕事の話とかあまりしてくれないし・・・いえ、それは別にいいんですけど、私、陛下のお役に立てているのかなって・・・ずっと思ってて・・・」
そうだったんだ・・・と陛下は嘆息した。
「・・・ごめんね、夕鈴。僕の言葉が足りなかったね。本物の夫婦なのに・・・」
「陛下・・・」
ふたりは卓越しに見つめ合い、ぎこちなく手をつなげた。
それでも足りない。
王は回り込んで、愛しい妃を抱き寄せずにいられなかった。
夕鈴はひし、としがみついてきた。
「夕鈴・・・!」
「へーかぁ・・・!」
ずずっ、と鼻をすする音さえ愛おしくて。
抱きしめる腕に、力が籠もった。
泣いていた夕鈴が、ぷは、と顔を上げた。
身長差が優に頭一個分はあるので、彼がぎゅっと抱きしめると、夕鈴は彼の胸と腕に囲まれて埋もれてしまうのである。
「ごめん、苦しかった?」
「だいじょうぶ、ですっ」
やけに勢いのある返事が返ってきたが、夕鈴自身はというと、肩で息をしていた。
その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。女の武器に分類するには量が盛大で、気前よすぎるだろう。
ああ、なんでこんなに可愛いのかな・・・と思いながら、彼は口づけした。

結局、その夜は互いの気持ちが盛り上がって、熱い夜になってしまったのだった。

~終~



本物夫婦ものを書いていて、ふと。陛下はこうなる前は一体どうしてたんだろうね~?なんて考えていたらこんな話になりました。

もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 愛の檻シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png リレーss
総もくじ  3kaku_s_L.png +小説以外(感想・考察etc)
もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • [◆◆1 可愛い人・おまけ(没ネタ)]へ
  • [【感想】第29話]へ
 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント:投稿可能です。
  • [◆◆1 可愛い人・おまけ(没ネタ)]へ
  • [【感想】第29話]へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。